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会報「SOPHIA」 平成21年02月号より

富士ハウス被害対策愛知県弁護団事務局
石 川 真 司

1 被害者説明会

 2月13日、弁護士会館5階ホールにて、当会主催の富士ハウス被害者説明会が開催されました。

 富士ハウスは、浜松市に本社を置く木造注文住宅メーカーであり、1月29日付で破産申立て、同日破産開始決定が出されています。破産管財人によれば、着工後未完成物件が728件、契約締結済未着工物件が804件もあるとのことです。こうした被害物件の数もさることながら、破産間際に、請負金額の7割を支払ったがまだ着工されないといった悲惨な被害も少なからずあり、同社と契約した施主に深刻な被害を発生させています。浜松市が本社であり、静岡県に次いで愛知県内に多数の被害者があるため、急遽、当会にて被害者説明会を開催したものです。

 説明会当日は、平日夕方開催にもかかわらず、遠くは、奈良、滋賀からの被害者を含め、約230組、400名を超える被害者が来館しました。

 説明会は、愛知県住宅紛争審査会運営委員会鈴木雅雄委員長の開会挨拶に始まり、富士ハウス破産管財人代理田中秀幸弁護士からの説明、それに対する質疑応答があり、その後、弁護士による個別相談を行いました。この個別相談は、午後7時30分頃から、弁護士会館の全室(地下から4階までの全室)を使って弁護士35名で対応しましたが、相談者は137名にものぼり、相談終了は午後9時を回っておりました。

2 管財人の方針

 このように、富士ハウスの破産では、着工後未完成の物件、契約締結後未着工の物件が多数あります。こうした契約について、破産管財人側は、東京に本社のあるIT関連企業がスポンサー会社として名乗り出ており、この会社とスポンサー契約を締結する。同社の出資による新会社にて富士ハウスの従業員の一部を雇用するなどして、その新会社にて新たに残工事の見積もりを出し、契約締結を働きかけていくというスキームを打ち出し、事実、2月15日、スポンサー会社との契約を発表し、同月17日の名古屋での管財人主催の説明会を皮切りにして、上記スキームに基づき、新会社による契約承継を働きかけています。

 なお、富士ハウスとの契約は、管財人において解除し、出来高に比して払い過ぎている部分は財団債権として、300万円以下の部分については10%、300万円を超える部分については20%という逆傾斜配分方式で弁済するとしています。

 ただ、新会社との間の契約は、未だ具体的な点において不明確な点も多く、施主は、新会社と契約していいものか否か、契約するとしてその内容が適正なものかどうか等、多くの場面で難しい判断に直面することが予想されます。また、上記スキームでも、多額の前払金を支払ったにもかかわらず未着工という特に被害の深刻な被害者に対する救済には全く十分ではありませんし、経営陣に対する責任追及等も見通しが立っていません。

3 弁護団結成

 こうした中、静岡県でいち早く弁護団が結成され、また、愛知でも、消費者問題対策特別委員会委員の有志を中心として弁護団立ち上げを決めました(団長柘植直也会員、事務局は当職)。今後、被害者からの個別相談に応じると共に、静岡県弁護団と協力して、破産管財人やスポンサー会社との間の交渉に取り組むこととなります。