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最後まで気を抜けない付添人活動

子どもの事件の現場から(204)
最後まで気を抜けない付添人活動

会報「SOPHIA」令和2年7月号より

子どもの権利委員会 委 員 光 野 良 祐

 私が少年と出会ったのは、ある年の春でした。被疑者段階での国選弁護人として配点を受け、留置施設に向かう間、どのような少年だろうかと色々と想像していた私に対して、少年は、接見室には不釣り合いなほどの満面の笑顔で私のことを出迎えてくれました。
 少年は、幼少期よりスポーツ選手になることを夢見ており、中学校時代には部活動に明け暮れていました。しかしながら、目標としていたチームに入れなかったことをきっかけに生活が崩れていきました。
 少年は、一見すると明るく社交的である反面、自己肯定感が低く、お調子者のように振る舞い、周りの友人らに言われたことを拒絶しないことで自分の居場所を作っているようでした。
 そのような性格も災いし、友人たちに流されるような形で夜遊びに走り、非行等を繰り返すようになりました。
 少年が逮捕されたきっかけとなった非行も他の友人に唆された結果、行われたものでした。
 今回の非行から逮捕されるまでの間に少年なりに日々の生活を反省し、生活リズムを整え、仕事を始めるなど、更生に向けて進み始めていました。
 少年の非行性は相当程度改善されていたものの、複数の非行事実があったことやこれまでの経緯等を踏まえ、補導委託付の試験観察になりました。
 しかしながら、少年は試験観察になったことをポジティブに捉え、前向きに補導委託先での生活を送っていました。
 私も1か月に1~2回ほどの割合で面会に行っていましたが、面会の度に委託先の方からも「頑張って働いている」との評価をいただいており、本人からも特にトラブルなく日々過ごしているとの話を聞いていたため、このまま順調に試験観察を終えるのだろうなと安心していました。
 そして、最終審判前の最後の面会になるだろうと思いながら、最終審判の1週間ほど前に少年に会いに行きました。
 しかしながら、少年は終始ため息をつきながら、どこか気怠そうに話をしていました。このような少年の様子を見るのは初めてであり内心驚きながらも、冷静を装って、何かあったのかを尋ねました。
 少年は「がっかりさせたくないから言いたくない」と話すことを拒んでいましたが、時間が経つにつれて少しずつ話をしてくれました。そこで、同僚とトラブルになったこと、その際に同僚が怪我を負ったこと等を話してくれました。
 少年から改めて詳細を聞き取った上で、今回のトラブルが少年の非行性によるものでない旨を調査官に伝えると共に、改めて調査官と協議を行うなどしました。
 同僚とのトラブルについては、トラブルの原因が同僚にあり、同僚の怪我自体が少年の行為を直接の原因とするものではなかったことや、これまでの少年の生活態様が良好であったことから、結果として少年は保護観察になりました。
 私自身、委託先での少年の生活に安心してしまい、試験観察中の少年との向き合いが十分でなかったのではないかと反省し、今後の付添人活動をする上で心に留めなければならない経験となりました。