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ひまるん相談室 ~ライフライン設備設置権の改正~

中部経済新聞2023年1月掲載
ひまるん相談室 ~ライフライン設備設置権の改正~

【質問】

 私は、公道に接していない土地を所有しています。公道からその土地に給水管を引き込みたいのですが、隣地である他人の土地を使用しなければ給水管を引き込むことができません。隣地を使用したいのですが、隣地の所有者が所在不明で承諾を得られず、隣地を使用できないので困っています。

 民法が改正され、4月から施行されると聞きましたが、どんな内容ですか。私は所有地に給水管を引き込めるようになるのですか。

【回答】

 4月から施行される改正民法で、他の土地に設備を設置しなければ水道水・電気・ガスの供給等の継続的給付を受けることができない土地の所有者は、必要な範囲内で、他の土地に設備を設置する権利が明文化されました。つまり、水道・電気・ガス等のライフラインについて、いわゆる設備設置権が認められました。

 これまでは、明文の規定がなかったため、隣地の所有者に設備の設置に応じてもらえない場合や、隣地の所有者が所在不明である場合等には、隣地を使用することが困難でした。

 改正民法により、今後は、例えば隣地の所有者が所在不明で承諾を得られない場合であっても、隣地を使用して給水管を引き込むことができるようになります。

 ただし、給水管の設置の場所・方法は、隣地のために損害が最も少ないものに限定されます。例えば、給水管を設置する場合には、公道に通じる私道や公道に至るための通行権の対象部分があれば、通常はその部分を選択しなければなりません。

 また、隣地に設備を設置しようとする場合、あらかじめ、その目的、場所及び方法を隣地の所有者に通知しなければなりません。隣地の所有者が所在不明である場合でも、簡易裁判所の公示による意思表示の方法により通知が必要とされています。

 加えて、隣地に給水管を設置する際に損害が生じた場合には、補償金を支払う必要がある場合があります。

 このように、改正民法の設備設置権を行使するにあたっては、いくつか検討事項がありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

 なお、民法の改正内容については、法務省のウェブサイトにて詳しく解説されておりますので、そちらもご参照ください。