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ひまるん相談室~遺産分割の期限はいつまで

中部経済新聞2022年6月掲載
ひまるん相談室~遺産分割の期限はいつまで

【質問】10年前に母が亡くなりましたが、遺産分割の話し合いをしないまま長期間が経過してしまいました。遺産分割には期限があるのでしょうか。

【回答】現在の民法では、遺産分割の期限については特に規定がありません。しかし、民法の改正があり、令和5年4月1日以降、変更がありますので、説明致します。

これまでの遺産分割において、相続人は、特に期間の制限なく、特別受益(被相続人から生前贈与等を受けた相続人は、遺産の前渡しを受けたとして、相続分を算定し直す制度)や寄与分(被相続人の財産形成に寄与した相続人がいる場合に相続分を算定し直す制度)を主張して、より公平な遺産分割を求めることができました。しかし、遺産分割が行われないまま長期間が経過すると、特別受益や寄与分に関する証拠が散逸し、関係者の記憶も薄れ、遺産分割の紛争が深刻になる恐れがあります。

そこで、令和3年民法改正では、相続開始(被相続人の死亡)の時から10年を経過した後の遺産分割は、原則として特別受益や寄与分を主張できず、法定相続分によることとされました(新民法904条の3)。もっとも、相続人全員が敢えて特別受益や寄与分を考慮した分割に合意すれば、この限りではありません。

この改正で注意すべき点は、改正法の施行日である令和5年4月1日より前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても、新法のルールが適用されることです。但し、経過措置により5年の猶予期間があります。これは、10年以上前に亡くなった方の遺産分割についても、令和10年3月31日までは改正前の民法による遺産分割が可能であることを意味します。

今回のご質問では、10年前に亡くなった母親の相続について改正法の施行日から新法が適用されます。但し、上記猶予期間があるので、施行日から5年間に限って、相続人は特別受益や寄与分を主張することが可能です。

近年、配偶者居住権や特別寄与料に関する制度の創設など、相続に関する民法改正が相次いでいます。相続で悩むことがあれば、是非一度弁護士にご相談ください。