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新会長インタビュー 愛知県弁護士会会長 蜂須賀太郎

中部経済新聞2022年4月掲載
新会長インタビュー 愛知県弁護士会会長 蜂須賀太郎

6c2eb42550f8306825960722e8bd02f806cb459c.jpg*ロシアによるウクライナへの軍事侵攻,まさに世界が戦争に直面している中での会長就任となりましたが。

 戦争は最大の人権侵害であり,戦争の放棄と平和的生存権の尊重を謳う日本国憲法の理念からも到底看過できません。

 今後,国内でも改憲問題,国防のあり方等の議論が活発になるでしょうが,憲法が掲げる恒久平和主義がいかに重要なものであるかを,会として,積極的に発信していきたいと思います。

*一方,国内ではコロナ禍がなかなか終息しませんね。

 新型コロナウイルス感染症の拡大は,市民生活に多大な影響を与え,貧富の差を拡大させてしまいました。また,経済的弱者とされる方々以外にも,高齢者,障がいのある方,女性,子どもやマイノリティといった社会的に弱い立場の方々の人権被害が増大してしまっています。こんな時こそ,救済を求める市民の権利擁護のため,人権の最後の砦である弁護士,弁護士会は,最大限の活動を行う責務があり,実行しなければなりません。

*どのような取組を考えておられますか。

 まずは,現状被害に遭われている方々の救済が第一です。人が人間らしく生きる権利は,基本的人権の最たるものです。生活困窮者への実効的な法的支援のほか,諸施策を提言していきます。また,愛知県には大企業も多くありますが,これを支える中小企業,零細企業が多数存在し,そこで働く従業員の方々,そのご家族の方々が多数生活されています。中小企業,零細企業の経営が維持されてはじめて従業員ら多くの方々の生活が守られます。新たな生活困窮者の発生を未然に防止するためにも,中小,零細の企業が破綻してしまわないよう法的支援を行わなければなりません。様々な方面からの取組が重要だと考えています。

*社会的に弱い立場にある方への権利擁護にも力を入れるのですね。

 経済的困窮者への支援のみならず,いじめや虐待等の被害を受ける子どもに対する支援,高齢者や障がいのある人に対する支援,消費者被害に苦しむ方々への支援,苦境に悩む中小・零細企業の方々への支援など,これまで当会が取り組んできた活動を,今後もより発展させていきます。

*弁護士には相談しにくい,こんなことで相談してもいいのかなと思う方が多いようですが。

 そのようなご意見のあることは承知しています。私自身の経験からも,もっと早い段階で相談に来てくれたら,より簡便に,より良き解決が図れたのになあと思う案件は多数あります。トラブルになりそうな段階,あるいはトラブルになった早い段階でのご相談をお勧めします。会では,市民の皆さまの弁護士へのアクセス障害の解消のため,法律相談センターを運営し,より利便性を高めるため,夜間法律相談や,離婚相談に限定されますがWebを利用した相談等を実施していますが,まだまだ努力不足だと思っています。更なる改善に取り組みます。

※4月に民法が改正され,成年年齢が一八歳に引き下げられましたが,これに対する対応は如何でしょうか。

 成年年齢が引き下げられたため,一八歳,一九歳の若者の消費者被害が拡大されることが想定されます。これまでは,悪徳商法に引っかかったとしても,未成年者取消権という権利があり,被害救済の道があったのですが,これが出来なくなります。前途洋々の未来のある若者が一八歳になった途端に被害に遭ってしまうことは何としても防がなくてはなりません。若年者への消費者被害を未然に防ぐために実効性のある消費者教育を充実させていきます。具体的には教育現場への講師派遣をはじめとする取組を更に充実させていくとともに,行政や地域との連携に積極的に取り組んで参ります。

*行政連携の強化ですね。

 当会では行政連携センターを発足させ,行政との連携強化を図っています。施策としては,①一般市民に向けた取組の連携,②行政職員に対して,法的助言等により支える取組,③取組を市民に届けるための情報発信での連携,④各分野での連携を実行可能とするために組織間の包括連携協定の締結を進めています。

*いろいろなところで弁護士は活動しているのですね。

 愛知県の全ての地域に,また,市民の方々が思い悩む全ての分野で,弁護士が法的支援を行えるよう,弁護士の活動領域を拡げていかなければなりません。活動領域の拡充に積極的に取り組みます。

 先に述べた行政分野のほか,国際業務や企業におけるコンプライアンス,ガバナンスの強化,SDGsの取組,さらには民事信託,事業承継への取組,ホームロイヤーの促進等,様々な分野で法的支援を行えるよう環境整備を図っていきます。 

*頼りがいのある弁護士会,真に市民のためになる,より良き弁護士会にしていくということですね。

 そのためには市民の皆さまからの信頼が不可欠ですが,残念ながら,昨今,弁護士による不祥事事案が発生しています。

 当会としては,早急にプロジェクトチームを立ち上げ,不祥事となった事案の事実関係を調査,確定し,その原因を探索し,再発を防止する実効性のある対策等を早急に実施します。

*市民の皆さまから信頼は不可欠ですね。最後に,読者に一言お願いします。

 弁護士の使命は,基本的人権の擁護と社会正義の実現です。特に,社会的に弱い立場の方々の人権を護るために最大限の努力をしなければなりません。そのような方々が弁護士に相談できるように,当会では,ホームページ等通じて様々な情報を発信してきました。SNSを使用した情報提供も含め,引き続き,皆さまに有益な情報を提供していきたいと考えています。

 今後とも,会員の力を結集して,迅速に良質な法的サービスを提供できるよう努め,頼りになる弁護士会として尽力致しますので,今後ともよろしくお願い致します。