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ひまるん相談室~共有制度が改正に 所在等不明共有者がいる場合でも変更・管理可能に~

中部経済新聞2022年10月掲載
ひまるん相談室~共有制度が改正に 所在等不明共有者がいる場合でも変更・管理可能に~

【質問】

 私は、弟とアパート一棟を共有しています。以前は一緒に管理していたのですが、弟がストリートミュージシャンをやりたいといって自宅を出て行ったきり、連絡もつかず、どこにいるかもわからなくなってしまいました。そういった中、今回新たに入居したいという方がいるのですが、私が単独で賃貸借契約を結んでよいのでしょうか。また、入居者を増やすために外壁工事をしたいのですが、これも私が単独で行ってもよいのでしょうか。

【回答】

 共有物については、どのような行為かによってルールが定められています。共有物に変更を加える場合には、共有者全員の同意が必要です。管理行為については、各共有者の持分の価格の過半数で決めます。保存行為は、各共有者が単独ですることができます。

 この点、共有者の中に所在不明者がいた場合、その同意を得ることができず、共有物の変更や管理が難しくなるという問題がありました。そこで、共有物の変更・管理の規定を社会経済情勢の変化に合わせて合理的なものにするため、令和3年民法改正により、所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加えることができることになりました。管理については、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により管理に関する事項を決定できるようになりました。これらは令和5年4月から施行されます。

 借地借家法の適用のある賃貸借契約は、変更行為にあたるため、共有者全員の合意が必要です。弟さんが所在不明であることを住民票調査などして証明し、裁判所の決定を得た上で、新たな入居希望者にあなたが部屋を賃貸することができます。なお、三年以下の定期建物賃貸借契約の場合は、管理行為に該当しますので、裁判所の決定を得た上で、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により決定することができます。

 また、共有物に変更を加える行為であっても、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」(軽微変更)については、持分の過半数で決定することができるとされました。建物の外壁工事は軽微変更にあたると考えられますので、裁判所の決定を得た上で、所在等不明共有者以外の共有者であるあなたが行うことができます。