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~遺言で未成年後見人を指定~

中部経済新聞2021年1月掲載 ひまるん相談室
~遺言で未成年後見人を指定~

 【質問】先月,夫と離婚しました。息子の親権は争った末に私が取得しました。もし私が死亡した場合には,元夫に息子の親権が移ってしまうのでしょうか。私としては,私が死亡した場合には,元夫よりも信頼できる私の姉に息子を育ててもらいたいと思っています。

 【回答】あなたが亡くなった場合に,元夫に自動的に親権が移るということはありません。

離婚に際して,あなたが息子さんの単独親権者となっていますが,単独親権者が死亡した場合には,未成年者に親権者がいない状態になりますので,法的には未成年後見が開始します(民法838条)。

 未成年後見が開始した場合に,誰が未成年後見人に就任するのかということが問題となりますが,民法839条では,未成年者に対して最後に親権を行う者は,遺言で未成年後見人を指定することができると定めています。親権者が未成年後見人を指定するには遺言以外の方法は認められていません。

 もし,遺言がない場合には,親族その他の利害関係人の請求によって、家庭裁判所が,諸事情を考慮して未成年後見人にふさわしい人物を未成年後見人に選任することとなります。

 ですから,あなたも万が一の場合に備えて遺言でお姉さんを息子さんの未成年後見人に指定しておくと,あなたが亡くなった後には,お姉さんが未成年後見人として息子さんの監護養育,財産管理等を行うこととなります。

 しかしながら,遺言で未成年後見人を指定していた場合であっても,元夫に親権が移る可能性が全くないわけではありません。

元夫が親権者変更の審判の申立を行った場合に,家庭裁判所が子の利益のため親権者変更の必要があると判断したときには,元夫が息子さんの親権者となります。

家庭裁判所は,子の福祉の観点から親権者変更の要否を判断しますので,元夫に親権を移すべきではない特別な事情があるようでしたら,そのことを詳しく記載した資料を作成して,後に元夫から親権者変更の申立があった際に,親族の方から裁判所に提出できるようにしておくと良いかと思います。

いずれにしましても,家庭裁判所は息子さんの心身の状態,生活状況,財産の内容,息子さんの意向,未成年後見人や親権者としての適性等様々な事情を考慮して息子さんにとって望ましい生育環境を目指します。