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自筆証書遺言保管制度とは?

中部経済新聞2020年11月掲載 ひまるん相談室
自筆証書遺言保管制度とは?

【質問】

 私が亡くなった後、子ども達が相続で揉めないよう、遺言書を作っておきたいと思います。自分で書いた遺言書を保管できる制度ができたと聞きました。どのような制度か教えてください。

【回答】

 自分で作成した遺言書を法務局に保管することができる「自筆証書遺言保管制度」が令和2年7月10日より施行されました。自筆証書遺言は、自書できれば遺言者本人のみで作成できるため、作成しやすいというメリットがあります。しかし、遺言者が亡くなった後、遺言書が発見されない、紛失してしまった、親族等により書き換えられる等のおそれがありました。そこで、自筆証書遺言のメリットを残したまま、これらのリスクを改善するための方策として自筆証書遺言保管制度が創設されました。

 自筆証書遺言保管制度を利用するにあたっては、まず遺言書及び申請書を事前に作成します。遺言書のうち、財産目録以外は全て自署する必要があります。財産目録については、パソコンでの作成や資料の添付によって作成することもできるようになりましたが、財産目録の各ページに署名捺印をする必要があります。

 遺言書及び申請書の作成が完了したら、遺言書保管所となる法務局に予約をします。遺言者の住所地、本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局で行います。

 次に、遺言書及び申請書を持参して保管の申請をします。遺言書は、ホッチキス止めも封入もしないで持参します。その他、本籍の記載のある住民票の写し、本人確認書類、手数料3900円を持参します。法務局へは遺言者本人が出向いて行う必要があります。

 手続終了後、保管番号等が記載された保管証が発行されます。

 遺言者は自筆証書遺言保管制度を利用後も、遺言書の閲覧、撤回をすることができ、保管証があると便利です。

 また、相続人等は、遺言者が亡くなられた後に限り遺言書の内容の証明書の取得をすることができます。この場合、その他の相続人等へ遺言書を保管している旨の通知がなされますので、遺言書の存在を知ることができます。自筆証書遺言保管制度により保管されている遺言書は家庭裁判所の検認は不要です。

 自筆証書遺言保管制度の概要は以上のとおりですが、法務局では遺言書の内容面のチェックはされませんので、遺言を作成する場合は弁護士にご相談ください。