愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 中部経済新聞2019年9月掲載ひまるん相談室
~借金の相続人がいない! 相続財産管理人選任の申立~

中部経済新聞2019年9月掲載ひまるん相談室
~借金の相続人がいない! 相続財産管理人選任の申立~

【質問】

 私は、友人にお金を貸していたのですが、その友人が最近亡くなりました。友人に妻子はなく、両親も他界しており、兄弟姉妹もいないため相続人はいないのですが、自宅の土地と建物を所有していたので、これを売却して、お金を返してもらうことはできるのでしょうか。

【回答】

 相続開始後に相続人がいない場合、自宅の土地建物といった相続財産は、法人つまり会社のようなものとして扱われます。これを相続財産法人と呼びます。そして、利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所が、この相続財産法人を管理する相続財産管理人を選任して、被相続人の法律関係の処理にあたらせることになっています。通常、相続財産管理人には、弁護士が選任されます。

 したがって、相続財産から貸金を回収するためには、家庭裁判所に対し、相続財産管理人選任の申立てを行う必要があります。債権者は、利害関係人にあたるので、申立人となることができます。

 申立てにあたり、裁判所は、申立人に対し、公告費用や管理人報酬等に充てるための費用の予納を求めるのが一般的です。予納金の額は、裁判所や相続財産の内容等によって異なりますが、50万円程度とされる場合が多いようです。相続財産法人に資産がない場合には、この予納金は、結果的に申立人の負担となってしまいます。また、被相続人に負債が多く、相続財産法人の資産が総負債額を下回る場合には、各債権者の債権額の割合に応じた配当しか受けられないため、貸金全額の返済を受けることができないこともあります。

そのため、手続費用に見合うだけの十分な相続財産がなければ、費用倒れになってしまうことがあるので注意が必要です。