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~根保証には極度額の定めが必要~

中部経済新聞2019年11月掲載 ひまるん相談室
~根保証には極度額の定めが必要~

【質問】

 私の次女が就職をするにあたり、一人暮らしをします。私がアパートの賃貸借契約の連帯保証人になりますが、「極度額」というものが賃貸借契約書に記載されていました。長女が一人暮らしをするときはそのような記載はなかったのですが、何か変わったのでしょうか。

【回答】

 平成二十九年五月に「民法の一部を改正する法律」が成立し、保証について民法の改正がありました。令和二年四月一日から保証について改正後の民法が適用されます。
 具体的には、個人が保証人となる根保証契約について、上限となる「極度額」を定める必要があるとされました。上限を設けることで、想定していない高額な保証を負うことがない一方で、限度額までは保証の責任があることを明確化し、慎重な判断を求めることによって保証人を保護しようという趣旨で改正されたものです。
「根保証」とは、限度額の範囲で将来にわたって発生する債務についてすべて保証する契約をいいます。今回のケースでいえば、次女が家賃を何ヶ月も滞納した場合には限度額の範囲ですべて保証することになり、限度額を超えた分については責任を負わないこととなります。この場合に極度額を定めないと、個人の根保証契約自体が無効となります。
 今回のご質問のように、個人の方が賃貸借契約の連帯保証をすることは、個人の根保証契約となりますので、極度額を定める必要があります。もっとも、連帯保証契約が令和二年四月一日より前に締結された場合は改正された民法は適用されませんので、極度額を定めることは必須ではありません。ご質問のケースは、改正後の民法に対応できるようにすでに賃貸借契約書を改訂しているのかもしれませんね。
 賃貸借契約に関係するものでは、元本確定事由について規定がされました。例えば、主債務者や保証人が死亡した場合は、元本が確定し、その後に発生する主債務は保証の対象外となります。その他、連帯保証人は、債権者に対して、主債務の履行状況に関して情報提供を求めることができます。このように、保証人が将来想定外の債務を負うことがないように、改正後の民法では様々な規定が設けられました。
 今回ご紹介した改正点は一部ですが、このように保証について実務上重要な点が改正されましたので、連帯保証人になる場合でも債権者となる場合でも契約書の記載や手続きについて十分にご注意ください。