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全国一斉労働相談ホットラインを実施

会報「SOPHIA」 令和元年7月号より

会 員 木 戸 章 太

1 6月12日、全国一斉労働相談ホットラインが実施された。時間は正午から午後8時まで。平日の実施であることから労働者の就労時間を考慮し、夜間も含めた実施とした。
 相談員は、時間帯ごとに交替で数人が待機し、相談者からの電話問い合わせに対してその場で回答をしていく。相談分類も、解雇問題、いじめ・パワハラ問題、労災問題など多岐にわたるが、相談員は事前に相談内容を知らされているわけでもないので、初めて聞く事柄にも即応する必要がある。

2 さて、今回の実施の傾向であるが、相談者の年齢層は、10代が0%、20代が12.5%、30代が25%、40代が12.5%、50代が37.5%、不明が12.5%であった。昨今ではいわゆるブラックバイト問題も話題であることから、10代、20代の相談数の増加という予想もあったが、今回の実施では50代の相談が最も多くなった。
 性別比では、男性と女性がちょうど1:1となった。
 就労形態でも、正規雇用者と非正規雇用者の比率はちょうど1:1となった。非正規雇用者の中でも、パート・アルバイト、契約社員、派遣など相談者層は多様で、社会的な就労形態の多様化が反映された結果とみられる。
 相談分類については、複数の要素を含む相談も多かったものの、「いじめ・パワハラ」分類が最多で、次いで「契約更新拒絶(雇い止め)」分類と「労災」分類が同率で多かった。
 「いじめ・パワハラ」の相談が多くなることは、例年どおりの傾向である。労働者の権利意識の向上により、会社内での境遇に疑問を呈する労働者が増えていること自体は、個人の権利実現のためにも職場環境の健全化のためにも歓迎すべき傾向であろう。もっとも、業務上の指導・叱責などについては、労働者は疑問を呈して相談に来るものの、その違法・適法の見極めは弁護士にとっても難しい場合が多い。「いじめ・パワハラ」問題は恒常的に相談が多い分類であり、今後の増加も予想されることから、相談員のより一層の研鑽が求められると感じた。
 また、私が担当した相談では、合理性に疑問のある会費が毎月の給与から天引きされているという件もあった。労基法違反となる可能性もあったものの、天引きされた給与額と弁護士費用とを天秤にかけると、経済的には弁護士への依頼を勧めるのも難しい事案である。こういった事案においても、労働相談ホットラインのような無料の取組の存在意義は大きいと感じられた。

3 労働法制は年々改正されており、直近では、4月から働き方改革関連法も一部施行済みである。また、労働情勢は経済に左右されながら日々変化していく。
 私たちは法制と情勢の変化に対応していく必要があり、また、現に弁護士に対するそのような社会的期待は高まっていると感じられる。私たちは引き続き知識をアップデートしながら、この取組を続けていきたい。