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中部経済新聞2018年8月掲載
ひまるん相談室 ~民法改正について~
中部経済新聞2018年8月掲載
ひまるん相談室 ~民法改正について~
【質問】
民法の改正について教えてください。
【回答】
平成29年5月26日、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が成立しました(同年6月2日交付。以下、現行民法を「現行法」、民法改正法を「改正法」とします)。今回の改正には、大きく二つの目的があります。
一つ目は、社会・経済の変化への対応を図るということです。現行法の契約に関する規定の多くは、明治29年(1896年)に民法が制定された時のままで改正されていません。しかし、この約120年のうちに社会・経済は大きく変化し、現行法の規定では想定、対応が困難な問題が生ずるようになっていました。
二つ目は、民法を国民一般にわかりやすいものとするため、ルールを明文化するということです。現行法の明文にはない事項や現行法では対応が難しい事項については判例の蓄積や解釈論によって解決されてきましたが、明文化されていないため、国民一般にわかりやすいものではありませんでした。
今回の改正は、契約に関する規定を中心に、①社会・経済の変化への対応、②国民一般にわかりやすい民法、との上記観点から行われたものです。
例えば、現在では日常の多くの契約において取引条件をあらかじめ定めた「約款」を用いますが、現行法に「約款」に関する規定はありませんでした。改正法では定型約款が契約の内容になるための要件や合意なく変更するための要件等を整備しました(改正法548条の2~4)。
また、現行法では、債権の消滅時効について、原則10年(商事消滅時効は5年)とし、業種ごとに短期の時効期間が定められ複雑でしたが、改正法ではこれを廃止し、原則として債権者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使することができるときから10年、と統一することとしました(改正法166条1項1~2号)。
現行法では、法定利率は年5%(商事法定利率は年6%)の固定制を取っており、超低金利時代に合致しないとの批判がありましたが、改正法では、商事法定利率の特則を廃止するとともに、経済情勢の変動とこれに伴う市場金利の変動に対応できるよう固定制を廃止し、3年ごとの変動制(改正法施行時は年3%)を採用しました(改正法404条)。
現行法では、保証について、平成16年(2004年)に改正があったものの、保証人の保護に関する規定が十分ではありませんでした。改正法では、保証人に対する主たる債務者の履行状況等の情報提供義務(改正法458条の2、同条の3)、個人根保証契約は責任を負う最大額(極度額)を定めた書面等で行うこと(改正法465条の2)、事業用の融資について経営者以外の保証人については公証人による意思確認手続を経ること(改正法465条の6~9)等、保証人の保護に関する規定を整備しました。
その他の改正点については、法務省のHP等で確認することができます。
なお、今回の改正は、一部の規定を除き、平成32年(2020年)4月1日から施行されます。