愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 中部経済新聞2018年7月掲載
言わせてちょ ~仮想通貨は大丈夫?~

中部経済新聞2018年7月掲載
言わせてちょ ~仮想通貨は大丈夫?~

【言わせてちょ】

 最近「仮想通貨」という言葉をよく耳にする。経済については門外漢であるが、あれこれ調べて見ると、気になる点がある。

 仮想通貨は、インターネット上で自由にやりとりされ、通貨のような機能を持つ電子データのことをいうらしい。平成29年4月に改正された資金決済に関する法律(以下「改正資金決済法」といいます)に、仮想通貨に関する規定も設けられたとも聞く。

 仮想通貨は、送金手数料も安く済む。また国家が管理するものではなく、発行枚数にも上限が定められているため、国家による安易な紙幣の発行によるインフレ(貨幣価値の低下)という事態も起こりにくいとも言われている。そのためか、その価値は高騰し、億万長者も出ているとも聞く。

 ただ、ビットコインについて調べた限りでは、気になる点がある。仮想通貨の信用の裏付けは、インターネット上で多数の者が常時取引履歴をチェックしているため、データの改ざんが極めて困難である点にあるという。このチェックする作業がマイニングと呼ばれ、その報酬としてビットコインが支払われるとのことである。ちなみに、マイニングのためには多数のコンピューターを稼働させ、大量の電力も消費するため、相当な費用がかかるのだそうである。

 経済音痴の私に理解できないのはこの点である。多数の者がチェックする、だから安心できる、しかも発行枚数が決まっているから価値が下がらない、というのだが、であれば、将来的に発行枚数の上限に到達したとき、チェックしても報酬としてのビットコインは支払われなくなるということになる。となれば、チェックしても報酬が出ない以上、マイニングする人がいなくなるということになる。そうなると、ビットコインの信頼の裏付けが無くなるということになるのではないかと思われるのである。

 こう考えてくると、早い内にビットコインに投資した人は、枚数が限られている以上値上がりは必至であり、皆が投資して値上がり利益を手にできるが、最後に入手した人は、信頼の根拠が無くなり、結果的にはババを掴まされる結果になるのではないかと思えてしまうのである。これが果たして「通貨」たり得るのだろうか。

 ちなみに、政府が法律を作っているが、これも仮想通貨を交換する「取引所」について規制するのみで、仮想通貨が暴落したときに保証するというものではない。また、取引所そのものについても銀行等政府が監督する金融機関と同視できるような資金的裏付けも無いのである。

 つい先日破綻した「カボチャの馬車」事件では、スルガ銀行がかなり強引な貸し付けをして被害を拡大させたと言われている。しかし、個人取引を拡大して業績を上げたスルガ銀行については、政府は一頃地銀の鏡として評価したという経緯もある。政府が法律を作ったと聞くと、あたかも仮想通貨に日本政府がお墨付きを与えたかのように見えるが、結局最後は自己責任である。美味しい話には裏がある。(MG)