愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 中部経済新聞2018年10月掲載
ひまるん相談室~情報公開法における法人情報開示のルールは?~

中部経済新聞2018年10月掲載
ひまるん相談室~情報公開法における法人情報開示のルールは?~

【質問】

 当社は、補助金申請や監督官庁への報告等様々な場面で行政機関に資料を提出していますが、このような文書も情報公開の対象となることがあると聞きました。情報公開における法人情報開示のルールを教えてください。

【回答】

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」といいます。)は、行政文書の開示義務を定めた法律です。国民が主権者として国政に関する決定権・選択権を行使するためには、国民の側に十分な情報が確保されている必要があり、情報公開法第一条は、政府の説明責任と、公正で民主的な行政の推進を法の目的に掲げています。 

 情報公開法において、行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの、と定義されています(第二条二項)。よって、行政機関の職員が作成した文書のみならず、企業や個人が作成して行政機関に提出し、行政機関において組織的に用いるものとして保有されている文書等も行政文書に含まれます。

 もっとも、行政文書には、個人のプライバシーに関する情報や、企業機密に属する情報等も記載されていることから、全ての行政文 書が公開の対象となるわけではなく、個人情報(第五条一号・一号 の二)、法人等情報(同条二号)、行政運営情報(防衛・外交情報、公共安全情報、審議検討過程情報、狭義の行政運営情報。同条三号ないし六号)が、不開示情報として定められています。

 このうち、法人に関する情報が不開示情報と扱われるためには、①公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの、または、②行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであり、かつ、法人等における通例として公にしないとされているもの等、非公開の条件を付けることが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの、のいずれかに該当することが必要です(同条二号)。①に該当するものとしては、ノウハウのような内部情報等が、また②に該当する場合としては、当該業界では通常公開していない情報を、行政機関の要請を受けて、非公開約束のもとに任意提供した情報が該当します。よって、補助金申請に添付したノウハウを含む事業情報やこれに伴う経理書類、監督官庁から依頼されて、法律に基づかずに任意に提出した内部書類等は、これに該当すると考えられます。ただし、上記①②に該当しても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められるときや(同条二号但書)、公益上特に必要があるときは(第七条)、開示の対象となることがあります。

 情報公開請求の対象となった行政文書のなかに開示請求者以外の法人に関する情報が記録されている場合、行政機関は、当該情報に係る法人に対し、意見書を提出する機会を与えることができます(第十三条一項)。また、上記①②に該当するにもかかわらず、公益上の必要性等から開示決定を行う場合には、必ず意見書を提出する機会を与えなければなりません(同条二項)。これを受けて、法人が開示に反対の意思を表示した意見書を提出した場合において、開示決定を行う行政機関は、開示決定日と開示を実施する日との間に、少なくとも二週間を置かなければならず(同条三項)、当該法人が、開示実施日までの間に、実施の停止を含む争訟等を行うことができるよう配慮されています。

 なお、地方公共団体が当該情報を保有する場合には、情報公開法ではなく、各地方公共団体の情報公開条例によることとなります。