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子どもの事件の現場から(199)  名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」開所しました

会報「SOPHIA」 令和2年2月号より

子どもの権利委員会 副委員長 間 宮 静 香

1 1月14日、名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」がNHK名古屋放送センタービル6階に開所しました。
2 「なごもっか」は「オンブズパーソン」「子どもの権利擁護機関」などと呼ばれる機関です。1989年に子どもの権利条約が採択され、1994年に日本は批准しました。批准国には、子どもの権利保障を実効化するために救済機関を作ることが求められています。
 しかし、日本は国として子どもの権利救済機関を有していません。地方では、1998年に日本で初めて設立された川西オンブズパーソンをはじめ、全国で33の自治体が子どもの権利救済機関を設置していますが、常設で独立性の確保された機関はそのうち10程度しかありません。
3 名古屋市は、2008年になごや子ども条例を施行しましたが、子どもの権利を守る救済機関の設置には至りませんでした。しかし、児童福祉法が改正され、第1条に子どもの権利条約が規定されるなど、この10年間に子どもの権利という概念が広まったことなどを踏まえ、2018年に子どもの権利擁護機関検討部会を設置し、2019年に名古屋市子どもの権利擁護委員条例を制定しました。そして開所したのが、全国で34番目の子どもの権利の救済機関である「なごもっか」です。
4 「なごもっか」は5名の子どもの権利擁護委員と10名の相談員、4名の事務局で構成されています。子どもの権利擁護委員は、大学教員3名(教育、児童福祉、心理)と弁護士2名(粕田陽子会員と私)で、検討部会から参加していた私が初代代表を務めています。相談員は、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、保健師などの専門職で構成されています。事務局は名古屋市職員ですが、独立性確保の観点から、相談内容を知ることはできません。
5 「なごもっか」の目的は子どもの権利を守る文化と社会をつくり、子どもの最善の利益(条約第3条)を確保することです。そのために、子どもの権利侵害に関する①相談に応じること②申立または発意に基づき、調査・調整・勧告・要請等を行うこと③勧告・要請等の内容を公表すること④子どもの権利に関する普及啓発を行うこと、の各職務を行うこととなっています。
 「なごもっか」が他の相談機関と違うのは、子どもの権利を中心にする点です。大人から相談があっても、原則として子どもの気持ちを聞き、子どもとともに解決方法を考えます。子どもに言わないでと言われたことを保護者や学校に伝えることはありません。また、学校等へ行き調整する機能を有していますが、子どもの気持ちに反して行くことは原則ありません。子どもは権利の主体であり、子どもの問題の解決には子どもの自己決定権を重視することが大切だからです。
 もう一つの特徴は、関係調整や調査をする機能を有し、それでもなお権利侵害が続く場合は勧告等を行うことができるということです。何人も子どもの権利擁護委員に協力する義務がありますので、弁護士が介入しても学校や施設等に拒絶されるような案件は、「なごもっか」に相談する利点があるといえます。例えば、いじめや不登校に関する学校の対応等です。