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他所者から見た名古屋市児童相談所の常勤弁護士の役割

子どもの事件の現場から(188)
他所者から見た名古屋市児童相談所の常勤弁護士の役割

会報「SOPHIA」 平成31年3月号より

兵庫県弁護士会 会員  浦   弘  文

 初めまして。兵庫県弁護士会の浦弘文と申します。平成30年11月から12月までの2か月間、名古屋市中央児童相談所及び同西部児童相談所に研修としてお邪魔しました。

 さて、毎日のように新聞やニュースで取り上げられている児童虐待問題ですが、それに関連して色々と議論されているのが児童相談所の体制や在り方です。特に児童相談所における弁護士配置は平成28年の児童福祉法改正によって規定されましたが、今年に入っても厚労省の専門委員会において、より積極的な配置を求める意見も出されています。そのような中で名古屋市は、中央・西部・東部それぞれの児童相談所に常勤弁護士が配置されている、全国的に見ても他に無いほど常勤弁護士配置に積極的な地方公共団体です。

 そのような名古屋市の児童相談所に派遣研修として2か月間お邪魔させていただいた当職から見た名古屋市児童相談所の常勤弁護士の役割等について述べたいと思います。

 まず研修に行って感じたことは、弁護士とケースワーカー(以下、「CW」といいます)との距離の近さです。物理的な距離の近さもありますが、毎日顔を合わせているからこその親近感&信頼感がそこにはありました。虐待通告の受理からその後の援助方針さらには家庭復帰まで、「点」ではなく「線(又は面)」で関わり続けることのできる常勤弁護士のメリットが最大限発揮されていることの表れだと思いました。

 また、常勤弁護士に期待されるのが、困難なケースへの対応であり、当然、名古屋市の各児童相談所に配置されている弁護士もこのようなケースに対応しています。保護者と対立しているケース、虐待か否かの判断が極めて難しいケース、医学的知識が必要不可欠なケース...CWにとっては厳しく、また難しい判断を迫られます。このような困難なケースを担当するCWに対して、常勤弁護士はある一つの筋を通すために法律を駆使して「これで大丈夫」「ここをもうちょっと調べてみて」「この方向性は難しいから、こういう方向では考えられない?」と助言します。その筋とは、「子どもの最善の利益の実現」です。子どもの最善の利益に資するか否か、それに資するケースワークであっても、それは法的に裏付けられているものかを判断し、ケースのことを一番把握しているCWの決定を後押しし、時にはブレーキをかけ、助言します。毎日顔を合わせている常勤弁護士であるからこそCWは思っていることを全力でぶつけることができ、常勤弁護士は当該ケースのこれまでの経緯を把握しており、さらにはCW一人ひとりの性格まで把握しているからこそ、ケースごとに適切な助言ができるのだと感じました。様々な専門職が日々議論を重ね、一人ひとりの子どもの最善の利益を追及する姿を見ることのできた、充実した2か月でした。

 私も兵庫県の明石市で本年4月に開設される児童相談所に関わる予定です(本年3月執筆)。名古屋市児童相談所で執務する常勤弁護士の先生方をお手本にして、子どもの利益を第一に考える児童相談所にできるよう尽力していきたいと思います。