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開かれた少年院!?の視察委員体験談

子どもの事件の現場から(186)
開かれた少年院!?の視察委員体験談

会報「SOPHIA」 平成31年1月号より

子どもの権利委員会委員  豊ケ岡学園視察委員 神 谷 明 文

 平成21年4月、広島少年院で教官数人による少年への暴行や、トイレに行かせずに失禁させたり、腕立て伏せ1000回をできなければ進級させないと強要、そのような事案が100件以上も発覚して大事件となった。

 「あしたのジョー」や「家栽の人」にも描かれていたように、少年院の処遇には大きな問題が隠れていると以前より指摘されていた。少年院法は昭和24年施行以来、殆ど手つかずだったが、この事件を契機に抜本的改正がなされた。新少年院法は、平成27年6月1日から施行。「再非行防止に向けた取組の充実」が基本理念であり、具体的には、

①少年院の年齢区分を撤廃し、犯罪性向や心身の障害の有無で分ける(第1種~第4種)。
②保護観察所との連携の下、帰住先の確保と就労支援の実施。
③出院者や保護者からの相談制度創設。
④面会は1月に2回以上。
⑤手紙の発受は基本的に認める。
⑥電話等による通信を原則的に認める。
⑦救済制度1:少年から法務大臣に対し、措置の取消・変更等の措置を求めうる。
⑧救済制度2:処遇について、少年から院長へ書面又は口頭で苦情の申出ができる。
⑨救済制度3:視察委員会の設置。委員が少年との面談権限を持ち、院長は協力義務あり。                              

 新法で、実務上の不満がかなり改善された。弁護士会から本邦初の視察委員を出すという訳で、活動的な若者の多い当会子どもの権利委員会において、歳が多く、太っていて一見押し出しがよさそうに見える私が、平成28年度から豊ケ岡学園視察委員に任ぜられた。同園は旧法的にいうと短期(6か月)の中等少年院であり、比較的犯罪傾向の進んでいない少年が収容される施設である。

 新法にいう「社会に開かれた少年院」の視察委員会メンバーは、弁護士(私)、地元の開業医、小学校長、町内会長である。日弁連から弁護士が委員長にとの要請があり、万事控えめな私であるが、勇気をふるって委員長に立候補。他の委員から報告書等は書いてくれるのでしょうねと念を押され、無事委員長に就任。まずは施設の見学をお願いした。子どもの権利委員会のかつての見学では、全く拒否だった単独室や懲戒に使用しているような個室、風呂、食堂、少年が運動している姿や場所まで、隅々まで見せてくれて驚いた。隠し事はないという態度表明であろう。

 次に提案箱(少年が委員に苦情等を投書する新制度)の設置場所を確かめ、提案箱のカギを委員会が管理することにした。さらに少年との面談を頼んだら、直ちにこころよく実施。教官らとの座談会や少年らの食事の試食も行うことができた。秘密主義的な院の過去を知る者にとっては、こんなにして貰ってよいのかしらと思うほどの変化である。

 ただ、当初の面談では提案箱を知らない少年もいた。また投書を書く姿や提案箱に入れる姿を教官に見られることを負担に感じる少年も多く、投書制度の改善が必要である。

 食事は美味しいと少年の意見は一致しているが、量の多少は両方の意見があり工夫が必要である。教官が相手にしてくれないとの少年の投書は深刻に受け止めるよう、直ちに院に申し入れた。少年の可塑性を信じる私は、環境を整え、適切に働きかければ少年は必ず善くなるとの信念を持つ。新少年院法の運用が当初の意気込みを忘れず継続されることを見守って行きたい。