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少年と共に成長する

子どもの事件の現場から(175)
少年と共に成長する

会報「SOPHIA」 平成30年 1月号より

会員 左近 麻奈美

深いため息をつき、「本当に反省しているように見えない。被害者や、心配してくれているお母さんの気持ちになって考えて」、警察署の接見室で、思わず少年に厳しい言葉をかけてしまったのは、この私でした。

少年の起こしてしまった事件は、複数人対1名の集団リンチ事件。被害少年は重傷で数か月の入院を要する非常に痛ましい事件でした。私は、弁護士2年目、少年事件2件目、悩みながらの付添人活動でした。

被疑者段階、共犯者が多く、被害者も重傷のため、なかなか示談の話が進まず、肝心の少年は事件の重大さに気づくことができず、このままではいけないと少年を叱ってしまいました。

少年は、過去にも暴力事件で保護観察処分を受けたことがあり、暴力を振るうことを軽く考えている節がありました。とはいえ、比較的温和な性格で、注意も素直に聞く姿勢があり、家族想いの優しい少年で、本件当時は、真面目に仕事をしていました。友人も多く、地元の後輩から頼れる兄貴分として慕われていました。本件は、親しい後輩らに誘われて、軽い気持ちで加担してしまいました。

少年の両親は、事情があって少年をあまり構えない状況でした。少年は、寂しさと若干の諦めを感じながらも、家族のことは大好きで、家族の手伝いを率先して行っていました。

家裁送致後、調査官からは、事件が重大であり、過去にも同種事件を起こしていること、被害感情も強く示談も進まないことから、もしかすると厳しい処分になるかもしれないと言われました。そうこうする中、突如、少年の意識が劇的に変わりだしました。鑑別所で面会した際、びっしりと書き込んだノートを見せてくれて、事件を振り返り、自分の何がいけなかったのか、被害者や周りの人にどんな迷惑をかけてしまったのか、今後どんなことを頑張っていきたいかをたくさん書き留めていました。私は感動し、思うままに少年を褒めました。こんなに変わったのだから、何とか試験観察にしてあげたいと奮闘し、できる限り手を尽くしました。

審判の直前、退所感想文の下書きを見せてもらいました。そこには、私が怒った時にとても驚いたこと、しかし、それがきっかけで事件について向き合うことができたこと、被害者や周りの人の気持ちを考えることができたこと、その後、私が褒めてくれたことがとても嬉しかったこと、事件と向き合えたのは私が弁護士としてではなく一人の人として本心で向き合ってくれたように感じたからだと書かれていました。私は、本当に嬉しく思い、涙ぐんでしまいました。

少年の頑張りと周囲の人々の協力を得て、試験観察となり、試験観察中も紆余曲折はありながら少年はしっかり頑張り、最終的に保護観察になりました。

私は、少年に限らず被疑者によく厳しい言葉をかけてしまうのですが、少年には優しく接しなければと思っていたので、正直、叱ってしまったことをとても反省していました。少年と共に悩みながら事件と向き合い、私自身とても学びの多い事件となりました。