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子どもの事件の現場から(169) どうすればよかったのか、試験観察中の再非行
会報「SOPHIA」 平成29年7月号より
会員 原 富祐美
私が担当した少年は、通っていた学校で先生に対して暴力を振るったことが原因で、観護措置を経て、在宅試験観察に付されました。
試験観察中の少年は、頑張っていました。
学校で先生とトラブルになり、先生から暴力を振るわれるというアクシデントに見舞われたときも、少年は先生を殴り返すことなく、ぐっと耐えて我慢しました。そうした少年を見て、私も担当調査官も担当裁判官も、「よく耐えた、成長した。」と喜びました。
ところが、「このまま行けば、試験観察終了後の審判では保護観察になれるね。」と話していた審判期日の朝、少年は再非行で逮捕されました。
再非行の事実は、試験観察の原因になった非行事実より格段に重いものでした。
実は、このときの試験観察は、2度目の試験観察でした。
1度目は、少年が学校で他の生徒や先生に暴力を振るったことが原因で試験観察に付されていましたが、その1度目の試験観察中に、再び学校で先生を殴るという出来事を起こし、少年には、観護措置決定がされました。
そして、その後の審判で2度目の試験観察に付されていたのです。
再非行があったにもかかわらず、再度試験観察に付されたことについては、再非行の発生につき少年に同情すべき事情があったことなどの背景事情がありましたが、それでも、担当された調査官や裁判官にとっては勇気のいる決断だったと思います。
このような経緯だったため、審判当日に逮捕された非行事実は、2度目の試験観察中の再非行(再々非行)にあたりました。
私は、審判当日に逮捕された少年に、直ちに会いに行きました。警察署での少年は、うなだれ、私の目を見ることもありませんでした。少年は、被害者のことと同じくらい、自分を信じて2度目の試験観察に付してくれた裁判官や意見を書いてくれた調査官、そして私の気持ちを気にしていたのです。
「信じてくれた人を裏切ってしまった。」少年の思いはそこにありました。
この再非行により、少年は、少年院送致になりましたが、「信じてくれた人に謝りたい。」という気持ちは、少年院に行ってからもぶれることがなく、その気持ちを、手紙を書いて裁判官にも伝えました。
手紙を読んだ裁判官は、少年に会いに行って下さり、少年が裁判官に、直接その気持ちを伝えられたのはよかったと思います。
ですが、一方で、私には、付添人としてついていながら、試験観察中に重大な再非行をさせるような事態になったことについて、強い後悔の気持ちが残りました。
調査官、裁判官も同じであったと思います。環境の調整が十分でなかったのではないか。もっと交友関係を整理させるべきではなかったか、もっと頻繁に連絡を取るべきではなかったか。
今でも、「私は、付添人としてどうするべきであったか。」と考えています。
少年を信じて応援しながら、大人としてどこまで口を出すか、とても難しいことですが、真剣に考えなければならないと思いました。少年院を出てきた少年は、示談が終了していなかった被害者の方と面談し、被害の弁償をしました。まじめに働き、分別のある青年として成長していく彼を見られることは、この事件における、私の唯一の救いです。