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「全国一斉投資被害110番」実施! 詐欺的被害の深刻化が明らかに!

会報「SOPHIA」令和5年3月号より

消費者委員会 委員 宮  﨑   亮

1 はじめに
 2月24日、弁護士会館において、当会及び名古屋投資被害弁護士研究会との共催で「全国一斉投資被害110番」が開催されました。先物取引被害全国研究会が全国的に実施を呼びかけ、毎年開催されているものです。
 昨年度の110番では42件もの相談が寄せられ、相談員が休む間もないほど電話が鳴り続けていましたが、今回も43件もの相談が寄せられ、投資被害、特に詐欺的被害が広がり続けていることが明らかになりました。

2 最近の傾向→詐欺的被害の増加
 投資被害といえば、かつては行政の許可・登録を得た商品先物取引業者や証券会社による違法な勧誘行為による被害が典型でした。
 しかし、現在では得体の知れない業者による詐欺的被害が増加しています。許可・登録がないどころか、相手方の特定すらできない業者による詐欺的被害が増えているのです。
 その背景には、悪徳業者が①SNS等のコミュニケーションツールと②集金ツール(暗号資産(仮想通貨)や他人名義の口座)を活用していることがあります。①SNSを活用すれば、わざわざ会社組織を設けなくても、効率的に顧客開拓することができ、SNSでしかやりとりしなければ悪徳業者は匿名性を維持し、被害者からの追及を回避できます。②集金も暗号資産や他人名義の口座を活用すれば匿名性を維持することができます。
 悪徳業者はこうしたツールを活用することによって詐欺的被害を発生させ続けています。

3 110番の集計結果
 今回の相談(43件)の取引内容の内訳は[FX取引:16件、株式取引等・仮想通貨:各4件、未公開株商法:3件、仕組債・〇〇必勝法:各1件、その他詐欺的金融商品:14件]でした。しかし、相談内容を分析するといずれも実態は詐欺的被害であり、結局、大半が詐欺的被害の相談でした。また大半の事案においてSNSを通じた勧誘がなされています。
 なお、前記の仕組債の相談(1件)は登録金融機関によるものでしたが、今後、仕組債販売に対する規制強化や景気後退局面到来が見込まれることから、これから仕組債の相談が増えていくことも予想されます。
 相談者の年齢層・男女の割合は概ね均等でした。被害金額は、500万円未満が約半分、1000万円未満が4分の3を占め、1億円超も3件あり、昨年よりも若干高額化しました。

4 分析(昨年との比較を踏まえて)
 昨年と同様、相談件数は非常に多く、相談内容も詐欺的被害が中心で、SNSが多く利用されていました。他方、被害額は若干高額化しています。このように、今回の110番で、被害状況は昨年よりも改善しておらず、むしろ悪化していることが明らかになりました。
 そもそも悪徳業者がSNSを活用している背景には、多くのSNS事業者が加害者特定のための弁護士会照会に応じず、悪徳業者の匿名性維持に貢献していることがあります。悪徳業者からこうしたツールを奪わなければ詐欺的被害を防ぐことはできません。そのため、当会をはじめ多くの単位会において、SNS事業者の本人確認義務等に関する意見を表明していますが(2022年5月17日付け当会意見書等)、SNS事業者の対応は未だ改善していません。今回の110番で、今後もSNS事業者に対し、自らの(社会的)責任を果たすよう求めていく必要があることを改めて感じました。