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犯人はだれ?オレ?! ~カリオストロ公園強盗致死事件~
会報「SOPHIA」 平成30年8月号より
法教育委員会 中高生向け模擬裁判チーム 渚 舞
8月3日に、88名もの中高生の参加を得て模擬裁判が開催されました。
模擬裁判の事案は、被害者の男性が仕事帰りに公園で何者かに殴打されて頭部を地面に強く打ち死亡、何者かは男性の財布を持ち去り原付にて逃走したというものです。
模擬裁判の出廷者は弁護士演じる次の3人。
まず、被告人は、飲食店アルバイトの男性で、事件当時に公園から走り去ったことを目撃された原付の所有者です。
目撃証人は、事件当時に公園から走り去った原付のナンバーと犯人の容姿の特徴を覚えており、被告人が犯人であると証言しました。
弁護側証人は、被告人の恋人で、事件当時、被告人の原付は盗まれていたと証言しました。
今回の論点は被告人の犯人性に絞られていましたが、3人の供述が複雑に絡み合っており、10人程度のグループに分かれた評議において、生徒は頭をひねっていました。
目撃者が見た犯人の容姿の特徴はよくあるもの、被告人と一致したからといって、それだけで犯人といえるのか?、目撃者の証言した原付ナンバーは信用できるが、事件当時に原付が盗まれていたという被告人と恋人の供述も信用できる、原付を盗んだ第三者が犯人では?、原付が盗まれたと被告人から聞いた、という恋人の供述は信用できるが、被告人が恋人に嘘をついたのでは?等々、供述を分析すればするほど難しいとの声がありました。
他方で、被告人役の桝村海士会員の善良さがにじみ出てしまったのか「被告人は犯罪しなさそう」だとか、目撃証人役の後藤謙治会員の役作りが完璧すぎたのか「目撃証人が真犯人だと思う」だとか、恋人役の衣川公恵会員が悪女を演じてくれという制作チームからの依頼に熱演で応えてくれたからなのか「恋人をかばうために嘘をつくタイプじゃない」等の感覚的な意見もありました。
また、今年は初めての試みとして、被告人が犯人であることを前提としたインターネット記事やSNSの書込みを資料として作成しました。安井一大会員によって精緻に資料が作成されていたのですが、生徒は、裁判に現れた証拠のみで判断するとの原則をしっかり理解しており、ネット資料は被告人が犯人である理由にはならないと発言していました。
模擬裁判を見たそれぞれの意見、評議にて生徒が議論をした上での意見でも、被告人が有罪か無罪か結論が分かれていました。
正解がない難しさ、だからこそ皆で議論を重ね、反対意見を聞いて同じ事実から見える違う側面を知る、この模擬裁判が、生徒にとって気づきの体験となっていれば幸いです。