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連続憲法講座第5回 同性カップルも結婚できる平等な婚姻制度を求めて ~同性婚実現の鍵は憲法24条

会報「SOPHIA」令和4年2月号より

両性の平等に関する委員会 委員 都築 さやか

日時 1月29日 13:30~16:00
場所 弁護士会館5階ホール(Zoom併用)
講師 水谷 陽子 会員

1 はじめに

「結婚の自由をすべての人に」訴訟弁護団(東京、愛知)の水谷陽子会員を講師として、連続憲法講座(第5回)「同性カップルも結婚できる平等な婚姻制度を求めて~同性婚実現の鍵は憲法24条」が開催された。
 以下、概要を報告する。

2 「結婚の自由をすべての人に」訴訟

⑴ 同訴訟は、北海道、東京、愛知、大阪、九州の全国5地域で提訴されている。
 この訴訟は、同性同士の婚姻を認めていない民法が憲法24条及び14条に違反するにも関わらず、国が民法の改正を怠ったという立法不作為に対する国家賠償請求訴訟である。
 同訴訟では、憲法24条1項は国家や第三者から干渉されることなく婚姻制度を利用する自由を保障しているから、同条に反するという主張と、憲法14条で禁止される性別による差別の「性別」に性的指向についても含まれるから、同条にも反するという主張をしている。
 この訴訟は、本来保障される個人の尊厳と平等を取り戻すための闘いである。
 訴訟の名称を「同性婚」訴訟ではなく、「結婚の自由をすべての人に」訴訟としたのは、この問題が、同性愛者だけの問題ではないからだ。例えば、トランスジェンダー男性で戸籍上の性別取扱を変更していない人(戸籍上の表記は女性)が、女性とパートナーになったとき、性自認に着目すると異性カップルであって同性カップルではないが、この場合も、現在の法律では、法律婚ができない。
 すべての人の選択肢、すなわち、法律婚をする生き方、法律婚をしない生き方、パートナーと暮らさない生き方、どの選択肢も尊重されることが大事である。
⑵ 同性婚が認められていない現状では、相続、配偶者控除、同性カップルの連れ子への親権、公営住宅への入居、配偶者としての在留資格は認められず、戸籍上の男女のカップルを前提として扱われることの多い財産共有規定や財産分与、DV防止法上の保護は認められないとされてしまうケースもある。
 また、病院で家族として同性パートナーの病状についての説明を受けることや手術の同意ができないなど、様々な局面で個人の尊厳や平等が損なわれている。
 同性婚が法律上認められていないことは、社会に対して同性婚が「正しくない」関係であるという偏見を与え、差別を助長する。
 ひとつひとつの差別や偏見がたとえ小さいものであったとしても、日々、差別や偏見にさらされ続けると、攻撃の威力はとても大きなものとなり、健康、自尊心を著しく害する原因になる。
⑶ 今後の展望としては、憲法24条によって同性同士の婚姻の自由が保障されるという判断がなされること、国賠法上の違法が認められること、さらに性別取扱い変更特例法の性別変更要件の違憲性を訴える訴訟等を通じて、人権問題が改善されていくことを期待する。
 また、家族の民主化、多様化に繋がり、憲法で保障される個人の尊厳が確保される社会になると良い。

3 感想

 未だ同性婚の法制化はなされていないが、立法不作為の国賠訴訟を継続することで、いずれは立法不作為の違法性が認められ、社会における家族のあり方すら大きく変革する可能性があると、未来に希望を感じた。