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西尾市産業廃棄物処分場建設予定地及び一色干潟の視察について

会報「SOPHIA」 平成30年8月号より

公害対策・環境保全委員会 委員    内 藤 真里恵

1 はじめに  

 8月10日、西尾市担当者による案内の下、同市一色町生田地区内において計画されている産業廃棄物処分場建設予定地の視察を行った。

2 産廃処分場問題について  

 同地区には過去に民間事業者により産業廃棄物処分場が設置され、埋立てを終えた後、適正な排水処理をされないまま放置され、現在、事業者は解散している。その跡地を取り囲む区域に、新たな事業者が産廃処分場の建設を予定している。しかしながら、自然生態系、三河湾の環境、汚染物質、教育環境、経済、防災といった観点から本問題を検討してきた同市産廃処理施設建設計画影響調査研究会の報告書によれば、産廃処分場の建設は多方面にわたって悪影響を及ぼすことが明白であり、新たな処分場建設は回避されることが望ましいと結論付けられている。今回はそうした問題点を踏まえて現地視察を行った。

産廃処分場建設予定地.jpg

  産廃処分場建設予定地

3 現地視察の状況  

 現地に赴いて印象的だったのは、建設予定地が海のすぐ間際であることだった。隣接する一色干潟は、水質浄化能力のあるアサリなどの二枚貝やゴカイなどの底生動物が多く生息しており、渡り鳥の飛来地であり、実際に干潟の水は非常に透明度が高い。この付近に大規模な産廃処分場が建設されることになれば、干潟等周辺の生態系に悪影響を及ぼし、自然環境の破壊は避けられない状況にある。
 また、当該地区の南海トラフ地震の想定最大震度は6強であり、液状化リスクが極めて高い。建設予定地の立地を見ても、災害や事故により汚染物質が流出し、海洋汚染が生じる危険性が高いことは容易に予想できた。汚染物質流出の影響は一色干潟のみならず、三河湾一帯に及ぶことも予想される。周辺地域の漁業・養鰻業等の産業が壊滅的な打撃を受ければ、経済的損害は計り知れない。
 更に、建設予定地の隣には一色中学校があり、有害物質の飛散や騒音による教育環境の悪化、通学路の危険の増大等も懸念される。

一色干潟.jpg

  一色干潟

4 おわりに  

 本件については、事業者による用地買収が進んでおり、西尾市では今後の対応について検討している。