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どっちが悪い?どっちも悪い?? -インコVSお婆さん-
会報「SOPHIA」 平成30年8月号より
法教育委員会 小学生向け模擬裁判チーム 西 田 寛
1 7月31日、小学生向け模擬裁判が行われました。今年の事案の概要は以下のとおり童話「舌切り雀」をもとに制作したもので、小学生に犯罪の成否を考えてもらいました。
インコを飼うお爺さんとお婆さんは、山で採ったマツタケを売って生活をしていました。お婆さんから3日間餌が与えられず腹をすかしたインコは、お婆さんが採ったマツタケを食べてしまい、売り物にできなくしてしまいました。インコがマツタケを食べていることに気付いたお婆さんは、インコの胸を1回殴るなどして、胸の骨を折る怪我を負わせました【お婆さんのインコに対する傷害罪】。
心優しいお爺さんは、お婆さんにかわって、インコに謝りに行ったところ、インコから小判の入った箱をもらいました。お婆さんは、その話を聞き、自分も謝れば小判をもらえるのではと考え、謝りに行くことにします。訪れたお婆さんに対し、インコは、お婆さんが苦手なカエルが偶然入れられていた大きな箱と、小判の入った小さな箱を、欲張りなお婆さんに選ばせることを思いつき、お婆さんは、大きな箱を選びます。お婆さんが家に帰る途中で、カエルが箱から飛び出してきて、お婆さんはびっくりして転んで、怪我をしました【インコのお婆さんに対する過失傷害罪】。
2 以上の事案について、左写真のように弁護士が各キャラクターを演じきって物語の劇をするとともに、模擬裁判を行い、小学生にそれぞれの犯罪の 成否を考えてもらいます。お婆さんの傷害罪の成否については、お婆さんがインコに餌をあげていなかったことや、殴らなくてもインコがマツタケを食べるのを止めさせられたのではないかといったことから、全員がおばあさんを有罪としました。これは、意地悪く見えるお婆さんの演技も影響したのではないかと思われます。
3 インコの過失傷害罪の成否については、お婆さんがカエルの入った大きな箱を持って帰り、カエルに驚いて転んで怪我をすることをインコが予想できたことなどを理由として有罪とする意見と、お婆さんが自分で大きな箱を選んで持ち帰ったのだからインコは無罪という意見に分かれました。 有罪とする理由では、インコが用意した箱が2つだけで選択肢が限られていたこと、インコがお婆さんに対して「大きな箱で良いのか」と1回しか確認しなかったことなどが挙げられました。制作側としても想定していなかった意見も挙げられ、感心しました。
4 小学生は、模擬裁判の内容を理解して議論をしていました。各班の中で意見が分かれることも多かった中、それぞれの理由に耳を傾け悩みながらも自分たちの考えをまとめてくれました。班で議論する時間がもっと欲しかったとの感想が多く、その点は来年に向けての改善点としたいと思います。
来年も、小学生を楽しませると共に、色々な考えに悩んでもらえるような内容にしたいと思います。