令和4年10月21日,金沢市で,「中部弁護士会連合会 第70回定期弁護士大会」が行われました。「定期弁護士大会」というのは,年に1回大事なことを決める会議のことで,「定時株主総会」のようなものです。

 午前中に行われたシンポジウムのテーマは,「罪に問われた人たちの社会復帰支援 ~弁護士の積極的な関与と多職種・多機関連携~」でした。刑務所を出所した人などの社会復帰支援に,私たち弁護士がどのように関わっていけるのか,基調講演やパネルディスカッションを通して深く学び,考える機会となりました。

 「よりそい弁護士制度」とは,罪に問われた人の社会復帰や再犯防止のための弁護士の活動を弁護士会が支援する制度です。これを運営する愛知県弁護士会「よりそい弁護士制度運営委員会」の活動は全国的にも注目を集めており,今回のシンポジウムでも,当委員会の委員がパネリストとして参加したり,資料集に制度概要や事例報告を載せたりして,この制度を紹介しました。

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 よりそい弁護士制度を採用している弁護士会はまだ少ないですが,今年度の中国地方弁護士大会シンポジウムでも,「罪に問われた人の社会復帰支援 ~『よりそい弁護士制度』の実現に向けて~」がテーマになり,当委員会の委員長がパネリストとして参加するなど,よりそい弁護士制度に対する関係者の期待はとても高まっています。

 もっとも,よりそい弁護士制度は社会復帰支援策の1つに過ぎません。よりそい弁護士の重要な仕事の1つに,他の支援機関に「つなぐ」活動があります。あるシンポジウムで,福祉関係者も,「福祉だけでは限界がある。出来るだけ沢山の人に関わってほしい。」と話していました。

 社会復帰支援を担う機関の1つに,「地域生活定着支援センター」というものがあります。その名のとおり,罪に問われた人たちが地域に定着できるよう支援する機関です。「社会復帰」とは,地域社会で生活できるようになることです。地域社会の一員である皆さんの協力なしに,社会復帰支援は成り立ちません。

 令和2年に刑務所に入った人のうち,99.7パーセントの人が「懲役刑」という刑罰を受けていますが,その中で刑期が5年を超える人は6パーセントもいません。つまり,刑務所に入った人の多くが5年以内に出所します。元受刑者は「別世界の人」ではありません。この記事が,「社会復帰支援」について,皆さんに考えていただくきっかけになればと思っています。