2019年(令和元年)に発足した,愛知県弁護士会の「よりそい弁護士制度」は,6年目を迎えて,定着してきており,愛知県弁護士会は一層の普及をめざしています。

 「よりそい弁護士制度」とは,罪に問われて,逮捕,勾留(未成年の場合は観護措置も),刑事裁判(未成年の場合は少年審判)を受け,刑務所で服役(未成年の場合は,少年院入院)した人の社会復帰,再犯防止のための弁護士の活動を愛知県弁護士会として支援する制度です。これを運営する愛知県弁護士会「よりそい弁護士制度運営委員会」の活動は全国的にも注目を集めており,福祉関係者の方からも,「社会復帰支援に福祉だけでは限界がある,弁護士がこういう活動をしているのは初めて知った,連携を深めていきたい」等の意見をいただいております。

 愛知県弁護士会の取り組みでは,申込件数が年間120件を超え(ほぼ毎月10件のペース)で,弁護士からの申込みが多いですが,その他,本人,関係機関(刑務所など),関係団体からの申込みもあります。釈放後,生活保護窓口や保護観察所などに同行して手続をサポートする,居住先を見つけてつなげる,医療につなげるなどの活動を行っています。他にも,借金の整理や身分関係の処理(離婚,離縁など)など,法律家でなければできない課題についての相談もあります(但し,実際の支援活動は,原則として,法テラスの利用をお願いしております)。

 このような取り組みを行う根底には、社会内での孤立が進んでおり、ネットワークからこぼれた人が犯罪を犯してしまう傾向が強い、刑罰だけでは問題は解決しないという認識があります。

 よりそい弁護士制度を採用している弁護士会は,現在,(北から)札幌,山梨,第一東京,第二東京,愛知,大阪,兵庫,広島,福岡の9弁護士会に広がりました(試行を含む)。

 折しも,令和4年の刑法等一部改正により,懲役刑と禁固刑が廃止され拘禁刑に一本化されることになりましたが,この改正の中で「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」も改正され,刑務所での処遇に「円滑な社会復帰支援を図ること」が追加されることになりました。施行は令和7年6月からですが,既にモデル事業として試行されているケースもあります。

 もっとも,よりそい弁護士制度は社会復帰支援策の1つに過ぎません。よりそい弁護士の重要な仕事の1つに,他の支援機関に「つなぐ」活動があります。罪に問われた人,犯した人が再犯に至らず,普通の社会生活を営めるようにするには,関係者の連携が不可欠です。弁護士もその一員として,罪に問われた人の社会復帰支援活動を進めていきたいと考えています。

 「こんな場合よりそい弁護士制度が使えるのか」,「申し込みたいがどういう手続をすればいいのか」などのお問い合わせは,弁護士会事務局(電話番号 052-203-1651)宛にお願いします。

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