愛知県弁護士会では,罪に問われた人の社会復帰,再犯防止のための弁護士の活動を支援する制度を始めています。

よりそい弁護士制度とは

 罪に問われて,逮捕,勾留(未成年の場合は観護措置も),刑事裁判(未成年の場合は少年審判)を受け,刑務所で服役(未成年の場合は,少年院入院)した人の社会復帰,再犯防止のための弁護士の活動を愛知県弁護士会として支援する制度です。

なぜ,よりそい弁護士制度を始めたの?

 私たち弁護士は法律専門家として,「弁護人」(少年事件の「付添人」)という立場で刑事司法に関わります。もっとも,捜査手続,成人の刑事裁判(少年の審判)が終了すれば,弁護士の活動はおしまいでいいのでしょうか。その方が,再び罪を犯すことなく円滑な社会生活を送れるよう支援することも弁護士に求められる役割ではないでしょうか。

 おりから,「犯罪認知件数,検挙者数は減少しているのに再犯者の割合は高くなっている」という統計が出され,政府をあげて「再犯防止施策」に取り組んでいます。私たち弁護士は,罪に問われた人が再び罪を犯さないことで,その方の人生のやり直しを実現し,再び犯罪被害者を出さず,ひいては安心して暮らせる社会を作ることに寄与したいと考えています。

 これまでも,少なくない弁護士が,刑事手続で仕事を終わるのではなく,その後もその方の社会復帰,再犯防止のために熱心に取り組んできました。このような活動の社会的意義を正当に評価し,弁護士会の活動として位置づけ,そのような活動をする弁護士を支援する(具体的には弁護士会からその弁護士に支援費を支払う)こととしたのです。

どんな人を支援してくれるの?

 以下,成人,未成年を問いません。愛知県内で,逮捕,勾留,(少年の)観護措置,裁判(少年審判)を受けた人,愛知県内の刑事施設(刑務所,少年院)に収容されている人・された人,刑事施設収容後愛知県内に帰住・就労する人です(以上,身体拘束を受けた人が対象です)。要するに,愛知県と何らかの関係を有する人です(愛知県弁護士会の制度ですからそのような地域限定をせざるを得ません)。そして,支援を受ける方が,社会復帰,再犯防止のための意欲を持ち,支援に当たる弁護士の助言指導を受け入れる意思を持っていることが条件です。これは,助言指導に従うことを義務づけるものではありませんが,社会復帰,再犯防止のための意欲を失ったり,助言指導に従わないことが明確になったりした場合には支援を打ち切ることがあります。なお,支援を受けようとする人に十分な資力がある場合には,その方の費用で弁護士に依頼することができますので,弁護士会からの支援は行わないことになります。

どんな支援をしてくれるの?

 刑事施設収容の前を「入口支援」,収容の後を「中間・出口支援」と名付けています。入口支援では,起訴猶予,略式罰金,執行猶予判決,保護観察処分などで釈放された後,生活保護の窓口,保護観察所,福祉機関,医療機関などに同行して手続をサポートする,中間・出口支援では,釈放(退院)後の帰住先,就労先を調整する,家族関係や被害者との関係を調整する,福祉施設,医療施設への入所・入院を調整する,などの支援活動を行っています。その方の借金の整理,身分関係の処理(離婚,離縁など)の法的支援も行います(但し,法テラスの利用をお願いすることがあります)。

誰が支援申込をできるの?

 個人(支援を受けたい本人,その家族,就労先の使用者などの関係者)の方は,まず,「相談」を申し込んでください。弁護士会から相談に当たる弁護士を派遣します。具体的な支援活動の申込は,個人からは受け付けておりません。その人の支援に当たろうとする弁護士,その方が収容されている刑事施設,地域生活定着支援センター・更生保護施設などの関係団体,機関から支援申込をしてください。弁護士会から支援に当たる弁護士を派遣します(支援に当たろうとする弁護士からの申込の場合は,その弁護士が支援に当たります)。いずれの場合も,愛知県弁護士会の「よりそい弁護士制度運営委員会」が弁護士会として支援するかどうかを決めます。

費用はかかるの?

 よりそい弁護士活動を行う弁護士への支援費は弁護士会が支払います。相談・支援を受ける方の負担はありません。

どれくらいの支援例があるの?

 よりそい弁護士制度は,平成31年度から始まり,同年度は50件の申込がありました。令和2年度は58件の申込があり,令和3年度は前年度の倍程度のペースで申込を受けています。その中には,刑事施設からの支援申込もあり,帰住先の調整がつかないまま満期で釈放せざるを得ない人の支援もよりそい弁護士に依頼できる,と歓迎されていますし,支援を受けた方からは,この制度を通じて治療につながり,社会復帰への手応えをつかめた,という感想も寄せられています。

支援に当たる方々の一員として

 罪に問われた人の社会復帰,再犯防止は,誰か一人の支援でできるものではありません。私たち弁護士は,その一員として,また法律専門家として,矯正・保護関係者,社会福祉関係者,医療関係者,薬物依存からの離脱活動をされている方々と連携して,法律専門家としての専門性を生かしながら,社会復帰,再犯防止活動に携わってまいります。

常設化,全国化に向けて

 このよりそい弁護士制度は,全国的には,兵庫県に続いて愛知県が2番目に始めました。現在の制度は,当初平成31年度,令和2年度に限定して開始しましたが,実績を受けて,令和3年度以降にも継続することになりました。また,愛知県弁護士会の制度であるため,「地域」の制限をせざるを得ませんが,全国で支援ができるようにするためにも全国的な制度にすることを目指しています。

お問い合わせは

 よりそい弁護士制度を利用できるのだろうか,申込はどのようにすればいいのか,などのお問い合わせは,愛知県弁護士会(052-203-1651)にお電話ください。 ◎よりそいイラスト⑦kaisya_soudan_man_woman_smile.png.png