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架空請求にご注意ください

1 架空請求とは

「借金や有料サイト利用料の債権譲渡を受けたという業者から身に覚えのない請求を受けた」 といった相談が増加しています。

その請求内容は、サイト管理者や債権回収業者を装った者が、不特定多数の者に対して、「最終通達書」「支払催告通知書」などの名称を用いて、「未納利用料金」、「遅延損害金」、「回収代行手数料」などの名目で支払を請求する通知を、はがきや電子メールなどで一方的に送り付けるものであり、受取人の自宅や会社まで請求に出向くかのような内容あるいは裁判を行い差し押さえをするといった記載をして恐怖心をあおり、金銭の振り込みを行わせるものです。

このような、根拠のない詐欺的な請求のことを「架空請求」と呼びます。

2 架空請求の見分け方

(1)

請求主体として「○○債権回収会社」という記載があることがあります。しかし、法務大臣の許可した債権回収会社でなければ、債権管理回収業を営むことができません(債権管理回収業に関する特別措置法第3条)。

また、出会い系サイトやアダルトサイトなどの利用料は、許可を受けた業者であっても回収することはできません。

そして、法務大臣の許可した債権回収会社は,次のような方法により請求や督促を行うことはありません。

  1. 目隠しシールがないハガキや電子メール携帯電話等での請求や督促すること
  2. 連絡先として多数の電話番号を列挙すること
  3. 請求書面で,担当者の連絡先として携帯電話を指定すること
  4. 個人名義の口座を回収金の振込先に指定すること

法務省が債権回収会社の一覧を公開しています(「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」)。もし心配であれば、そこで確認してください。

(2)

はがきなどの文面に「債権譲渡を受けた」と記載されている場合があります。民法467条では、債権譲渡を行う場合、譲渡人がこれを債務者に通知するか債務者がこれを承諾するのでなければ、債務者に対抗できないという規定があります。

つまり、債権を譲り受けた側が、債務者に譲り受けたと通知をしても、債務者はその支払いを拒むことができるというものです。

「債権を譲り受けた」という文章の通知がきた場合、法的に正当な債権譲渡手続がなされていないということであり、かかる業者は正当な業者でないことが分かります。

(3)

「電子通信料金未納利用分」といった記載はあるが、具体的な利用明細の記載がない請求が届いた場合、もし何らかの有料サイトを利用されている場合でも、請求者は料金の請求にあたり利用明細等の請求根拠を示す必要があります。

したがって、請求明細等の請求の根拠が示されていない請求は不正なものであり、支払をしてはいけません。

(4)

「法務省認可通達書」「法務省認可特殊法人」などと、行政機関の関与があるような記述がある場合がありあますが、 行政機関がこのような「通達書」を出すことはあり得ません。

3 請求が届いたときの対応について

無視するに尽きます

というのは、連絡先の携帯電話(であることが多く、そのこと自体が、正規の業者でないということを推測させるものです)に連絡すれば、着信履歴が残ります。仮に債務を確認するためや支払い意思のないことを伝えるものであってもこちらから連絡をすることによって名前,住所,電話番号,勤務先等の個人情報を知られてしまうおそれがあり、その結果、ターゲットにされてしまいます。

業者が請求の詳細を示さず電話連絡を求めるのは、電話口で脅迫を行い、支払を強要するためです。記載されていた電話番号に連絡したために、脅迫電話が続くようになるなどの被害を受けたという事例は多いです。

さらに、業者は同じような会社とネットワークを有しており、ターゲットにされるとその個人情報が他の業者にも流出し、他の業者から同じような架空請求を受けることとなってしまいます。

「裁判」「給与差し押さえ」などの記述については、そもそも請求根拠がないのであれば、裁判所が架空請求業者の請求に応じて強制執行を行うことはあり得ません。

「勤務先に集金に行く。出張旅費もあわせて請求する」という記載も単なる脅し文句です。

そして、金銭を振り込んでしまうと、結果的に恐喝の口実を認めたことになり、以後さらに要求額が増えることも考えられます。また、実際にあったケースでは、お金を振り込んだにもかかわらず、振り込まれていないと相手方から告げられ、さらに数百万円を詐取されたということもあります。

以上により、架空請求に対しては、無視することが最善の策ということになります。ただし、本当に裁判所から来た書類であれば、適切な対処が必要ですので、注意しなければなりません。

もし架空請求かどうか確認したいのであれば、書面に記載された連絡先にすぐ問い合わせるのではなく、まず消費生活センターや警察、愛知県弁護士会が設置している法律相談センターの「消費者被害に関する相談窓口」にご相談下さい(予約制)。