愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > クーリング・オフについて
クーリング・オフについて
1 クーリング・オフとは
2 クーリング・オフを定めている法律
このページでは、まず、特定商取引法のクーリング・オフを説明し、その後、その他の法律の概要を説明します。
3 特定商取引法でクーリング・オフが可能な場合
特定商取引法が定めるクーリング・オフを行うためには、以下の条件を満たす必要があります。
(1) 特定商取引法でクーリング・オフができると定められているのは、以下の5つの類型のいずれかの取引です。
ア 訪問販売
業者が自宅に訪れた場合の外、キャッチセールス(路上等で呼び止めた後、営業所や喫茶店等に同行させて販売する)やアポイントメントセールス(販売目的を告げずに電話等で呼び出して販売する)等も、これにあたります。
イ 電話勧誘販売
販売業者が電話で勧誘し、郵便・FAX・電話・Eメール等により消費者の申込みを受け付ける販売等のことです。
消費者から電話をかけた場合でも、販売業者が、郵便やビラ等で、勧誘する目的であることを告げないで消費者に電話をかけさせた場合は、これにあたります。
ウ 連鎖販売取引
いわゆるマルチ商法が、これにあたります。
エ 特定継続的役務提供
一定の期間を越える継続的な役務(サービス)の提供と、これに対する一定額以上の対価を約束する取引のことです。
オ 業務提供誘引販売取引
仕事を提供して収入が得られるとして勧誘し、その仕事をするために必要だとして商品等を販売する取引のことです。
(2) 対象商品・役務(サービス)
ア 次に、訪問販売・電話勧誘販売の場合は、取引の対象がクーリング・オフの可能な商品やサービスでなければ、クーリング・オフは認められません。
クーリングオフの可能な商品や役務(サービス)については、政令(特定商取引に関する法律施行令)で幅広く定められていて大抵のものが対象となりますが、消耗品(健康食品、防虫剤、殺虫剤、化粧品等)は、交付された契約書面に「使用するとクーリング・オフができなくなる」ことが記載されていて、かつ、使用・消費した場合、通常の小売最小単位について、クーリングオフができなくなります。また、乗用自動車と、3000円未満の現金取引についても、クーリング・オフは認められません。
イ 特定継続的役務提供の場合、現在、エステティックサロン、語学教室、家 庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の6つについて、クーリング・オフが認められています。
ウ 連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引では、全ての商品・権利・役務(サービス)が対象となります。
(3) クーリング・オフの行使期間
次に、クーリング・オフは、行使期間内に行わなければなりません。
行使期間は、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供の場合は、法律の定める事項を記載した契約書面を受け取った日から8日間で、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引の場合は、法律の定める事項を記載した契約書面を受け取った日から20日間です。この行使期間には、契約書面を受け取った日も含みます。
しかし、行使期間を過ぎていてもクーリング・オフができる場合がありますので、注意してください。それは、契約書面を受け取っていない場合や、受け取っていても、法律の定める事項の記載漏れがある場合、さらに、業者が消費者に嘘をつくなどしてクーリング・オフをするのを妨害した場合で、このような場合には、まだクーリング・オフが可能な場合がありますので、詳しくは弁護士などに相談してください。
また、行使期間内であれば、例えばリフォーム工事の場合で、工事が終わった後でもクーリング・オフができますので、この点も注意してください。
(4) クーリング・オフの行使方法
クーリング・オフは、書面で行うようにしてください。参考として、書面の例を載せておきます。
消費者は、行使期間内に、この書面を発送すればよく、行使期間内に書面が販売業者に届く必要はありません。
この発送日を明確にするために、クーリング・オフは、内容証明郵便で行うのが確実ですが、そうでない場合でも、書面のコピーを残した上で、少なくとも簡易書留扱いにはしておくべきでしょう。
また、クーリング・オフには理由はいりませんので、この書面に、クーリング・オフを行う理由を書く必要はありません。
(5) クーリング・オフの効果
クーリング・オフが行われた場合、販売業者は、受け取った代金を速やかに返金しなければなりません。また、販売業者は損害賠償や違約金を、一切、消費者に請求することはできません。
消費者は、提供された役務(サービス)の対価を支払う必要はありません。また、商品の返還費用は、販売業者の負担となります。
4 割賦販売法について
いわゆるクレジット契約・提携ローンで、支払いが2か月以上の期間にわたり、かつ3回以上に分けて支払う条件のものについては、以下の要件を満たす場合、クーリング・オフが認められます。
ア 販売業者が、営業所等以外の場所でクレジット契約・提携ローンの方法 で、商品販売やサービス提供につき、申し込みを受けたり、契約を締結したこと。
イ 当該商品やサービスが、割賦販売法施行令で定める指定商品・指定役務(サービス)であること。
ウ 法律の定める事項を記載した契約書面を受け取った日から8日間以内であること。
エ 支払いを全て終えてしまった場合でないこと。
オ クーリング・オフは、原則として書面で行うこと。
要件アを満たせば、前述した特定商取引法の「訪問販売」にあたることになりますが、特定商取引法でクーリング・オフが認められている商品・役務(サービス)については、割賦販売法によるクーリング・オフを行うことはできません。
もっとも、要件イの、割賦販売法の指定商品・指定役務(サービス)には、特定商取引法でクーリング・オフの対象とされている商品・役務(サービス)には定められていないもの(例えば、自動販売機等)もあり、この場合には、割賦販売法によるクーリング・オフを行うことができます。
5 その他の法律について
以上の特定商取引法・割賦販売法以外で、クーリング・オフが定められている主な法律の概要は、以下のとおりです。
(1) 保険業法
営業所以外の場所での保険期間1年を超える生命保険・損害保険契約につき、法で定める書面を受領した日又は申し込みをした日のいずれか遅い日から8日間は、クーリング・オフができます。
(2) ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律
50万円以上のゴルフ会員権契約につき、法で定める書面を受領した日から8日間は、クーリング・オフができます。
(3) 特定商品等の預託等取引契約に関する法律
特定の商品についてのいわゆる現物まがい商法につき、法で定める書面を受領した日から14日間は、クーリング・オフができます。
(4) 宅地建物取引業法
業者が売主である事務所等以外での宅地建物の売買につき、クーリング・オフの告知日から8日間は、クーリング・オフができます。
(5) 有価証券に係る投資顧問業の規制法に関する法律
投資顧問会社との投資顧問契約につき、法で定める書面を受領した日から10日間は、クーリング・オフができます。
(6) 商品投資に係る事業の規制に関する法律
商品ファンド契約につき、法で定める書面を受領した日から10日間は、クーリング・オフができます。
(7) 海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律
海外商品市場における先物取引の受託等を内容とする契約につき、基本契約締結の日から14日間は、クーリング・オフができます。