1 BCPとは

 BCP(事業継続計画)とは、「災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事務活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略」とされています(内閣府ウェブサイト「防災情報のページ」より)。

 昨今の大規模災害の頻発や新型コロナウイルス流行により、災害対応に対する関心は高まっており、企業や法律事務所においてもBCPを策定している場合が少なくないと思われます。

 大規模災害が発生した場合、弁護士会及び弁護士の役割として、被災者支援活動やその他の人権擁護活動を担うことが期待されますが、その前提として弁護士会の業務を継続させることが不可欠であるため、愛知県弁護士会としても今般、BCPを策定することとしました。

2 弁護士会BCPの概要

 今回策定した弁護士会BCPは、南海トラフ地震等の大規模災害が発生した場合を想定した「愛知県弁護士会業務継続計画書」と、感染症がまん延した場合を想定した「愛知県弁護士会感染症まん延時業務継続計画書」の2種類です。

 構成としては、いずれのBCPも本文と「事務局の業務継続の考え方」からなります。

 本文では、BCPの目的、想定する災害等を規定し、発災時の行動指針、非常時における業務遂行の指針、継続する業務の選定や目標復旧時間の定め方等を定めるとともに、災害発生に備え事前に行なっておくべき対策、訓練等についても記載しています。

 「事務局の業務継続の考え方」では、当会事務局の担う業務を各課・係ごとに細かく分類し、各業務について継続レベルを4段階(S:必須、A:継続、B:縮小、C:休止)で評価しました。

 継続レベルSと評価したものは、当番弁護士や国選など刑事弁護関係の業務、Aと評価したものは、弁護士名簿登録関係業務や法律相談センター関係の業務等、弁護士会の活動を維持するために最低限必要で、かつ、テレワークによる業務の実施が困難な業務です。

 また、本会事務局の業務だけではなく、西三河、東三河、一宮、半田の各支部事務局の業務についても分類・評価し、いずれかの支部所在地において災害が発生した場合にも対応可能なものとしました。

3 来たるべき災害に備えて

 大規模災害が発生した場合、それに対応し被害を最小限に抑えるためには事前の備えが最も重要になります。

 私達弁護士も、「災害は必ず発生するものである」との認識のもと、BCP策定を含めた災害対策に意識的に取り組んでいく所存です。

 また、愛知県弁護士会においても、BCP策定のほか、災害時会員安否確認システムの試験的運用を年1回程度行なうなど、日頃から災害対策に取り組んでいきます。

 さらに、災害対策委員会としては、今回の弁護士会BCP策定の経験を活用し、企業や事業者の皆様がBCPを策定することの支援事業にも、取り組んでいきたいと思います。


【参考文献】

中野明安・津久井進編(2021)『防災・減災の法務-事業継続のために何をすべきか』有斐閣

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