愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 労働法制委員会 > 労働法制委員会

労働法制委員会

活動案内

労働法制の分野は、社会の求めに応じて法律の改正がひんぱんに行われています。また、紛争解決のために、訴訟だけではなく、労働審判やあっせん手続など、様々な手段が用意されています。当委員会は、こうした労働問題についての法制度全般について、調査研究を行い、会員のスキルアップのための研修会やゼミを実施しています。

労働審判制度 Q&A

労働審判制度というのはどういう制度ですか?

 労働審判は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた紛争に関して、次のような特徴を持つ紛争解決制度です。

 まず、手続の主体は、裁判官(労働審判官)1名と、労働問題に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名の、合計3名で組織される労働審判委員会が行う、とされています。

 次に、期日の回数について、特別な事情がある場合を除いて、3回以内の期日で迅速に行うとされています。

 そして、この手続の中では、調停の成立が期待されますが、その見込みがないときに当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするための審判がなされることになっています。

 なお、紛争解決手続としては、簡裁での民事調停という制度や、労働局での「あっせん」などの手続もありますが、相手方が出頭しないと手続が進まないという問題がありました。この労働審判では、相手方不出頭でも手続が進められます。「訴訟」と「調停」の中間的な制度と言えましょう。

 この労働審判制度は、平成18年4月1日から実施されています。

労働審判制度では、事件はどのように解決されているのでしょうか?

 労働審判制度は、平成18年4月から開始されましたが、同年12月までに54件の申立があり、その後、平成21年に275件もの申立があった時期を除けば、平成22年以降の申立件数は毎年徐々に増加しており、平成25年の申立件数は213件でした。

 平成21年から平成25年までの5年間に解決された終了件数1034件(年平均約207件)のうち、約73%に当たる760件(年平均152件)が調停成立(合意による解決)となっています。

 また、労働審判事件の解決までの期間については、2回目の期日までに終了するケースが70~80%程度で、このうち、約70%が調停成立という形で解決しています。第1回目の期日が申立後40日以内とされていますので、2回目で解決する場合は、事案にもよりますが、申立後およそ2ヶ月程で解決することになります。

 このように、労働審判制度は、労働者と使用者間の紛争を迅速かつ適切に解決する制度として、認知度が高まっていると言えます。

労働審判はどんな人が利用できますか?

 「個別労働紛争」の当事者が利用できます。この「個別労働紛争」とは、労働者が個別的に当事者となって事業主(使用者)と争う形の労働紛争で、例えば解雇・雇い止め、労働条件の変更、出向・配転、賃金等の不払いなどの紛争を言います。これに対し、労働組合が当事者となって事業主(使用者)と争うような集団的紛争は労働審判の対象には含まれません。

 労働者でも事業主(使用者)でも申立をすることができますが、実際上は労働者が多いと思われます。

 ただし公務員関係の法律が適用される場合は、労働審判の対象から除かれます。

 また、事案の性質からみて、審判手続が紛争の迅速かつ適切な解決のために適当でないとされる場合には、裁判所が審判を終了することもあります。例えば、組合間差別や均等待遇の紛争のうち複雑なものなどが考えられます。

申立てをするには?

 労働審判を扱うのは地方裁判所本庁です。もっとも、平成22年4月から東京地方裁判所の立川支部と福岡地方裁判所の小倉支部でも取扱いが開始され、平成29年4月からは静岡地方裁判所の浜松支部・長野地方裁判所の松本支部・広島地方裁判所の福山支部でも取扱いが始まります。愛知県の場合、現在までのところ、名古屋地方裁判所の本庁(中区三の丸)だけで実施され、岡崎・一宮・半田・豊橋の支部では行われていません。

 申立てをするには「申立の趣旨及び理由」を記載した書面を提出する必要があります。「趣旨」とは、申立てをする人が解決によって求める内容を簡潔にまとめたもので、例えば「相手方は申立人に対し金○○万○○○○円を支払え」、「申立人が相手方に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する」などです。

 「理由」とは申立の趣旨(請求)を基礎づける事実の主張を言います。例えば「相手方は平成○年○月○日、申立人を即時解雇するという意思表示をした。しかし、解雇予告手当を支払っていない。解雇予告手当としては金○○万円が相当である」などの主張です。

労働審判の審理はどう進みますか?

 3回の期日で審判するためには、事実や証拠などについて当事者双方が相当な準備をすることが必要です。

 できるだけ第1回期日から充実した審理(事案の解明と立証)をして、争点をはっきりさせ迅速かつ適切な審判を行うことが求められます。当事者が証拠提出を渋ったりして事案解明が進まないと困るので、審判委員会は職権で事実調査、証拠調べなどができるとされています。

 このように審判委員会が期日を主催して進行し、適宜調停も行うことが出来ますから、普通の民事裁判のように書面のやりとりだけで終わる手続ではありません。そのため、1回の期日の時間も1~3時間程度を必要とすることが多いです。

 なお手続は非公開とされています。

労働審判員はどんな人ですか?

 労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識を有する人とされています。現時点では全国で使用者団体、労働団体からそれぞれ推薦された1475人(名古屋地方裁判所では定員82人)の労働審判員が任命されています。

 労働審判員の候補者に対しては数日間にわたる研修受講が義務付けられています。

 労働審判員は労使の利益・立場を代表する者ではなく、専門的な知識経験を活かして適切な審判・調停を行うことが期待されています。

審判の結果に不服があるときはどうしたらよいですか?

 審判は権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した内容であることが必要ですが、その結果に不服がある場合には、審判書送達または審判の告知を受けたときから2週間以内に、裁判所に「異議」の申立てをすることができます。

 そして、適法な異議申立てがあれば、審判が失効して通常の民事訴訟手続に移りますが、当初の労働審判申立てのときに訴え提起があったものとみなされます。もっとも、異議申立てした当事者は、それまでの労働審判手続の経過も踏まえた詳細な主張を記載した「訴状に代わる準備書面」を提出したり、労働審判手続に提出していた証拠をあらためて訴訟で提出したりすることが必要です。

弁護士会で相談することができますか?

 愛知県弁護士会では、名古屋法律相談センター(名古屋駅前)において、「労働相談集中相談日」を設けて、労働問題に詳しい弁護士が相談に応じる体制をとっています。予約制となっていますので、事前にお電話(052-565-6110)にてご予約ください。

労働審判手続の代理人は、誰に依頼できますか?

 労働審判手続は、弁護士が代理人となることができます。その他にも「当事者の権利利益の保護及び労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当」な人も裁判所の許可を得て代理人になることもできますが、法的な問題点を踏まえて事件を迅速かつ効果的に解決するためには、弁護士にご依頼いただくのが望ましいといえます。

 上記「労働相談集中相談日」の相談担当弁護士に依頼することも可能ですので、是非ご利用下さい。

(初掲:平成17年4月、改訂:平成18年11月、三訂:平成20年8月、四訂:平成22年6月、五訂:平成26年10月 六訂:平成28年12月)

労働法制委員会からのお知らせ

労働法制委員会からのお知らせや最新情報をお届けします。