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非弁問題に関する事例

事例①-弁護士法違反の訴訟行為の効力-

事案

Aさんが、司法書士に対し、過払金返還請求事件を依頼し、印鑑を預け、司法書士が、消費者金融に対し、過払金の発生を主張し、不当利得に基づき1080万9982円等の返還、取引履歴の開示義務違反を主張し、不法行為に基づき50万円の損害賠償請求をすること等を内容とする訴状を作成し、自ら依頼者名義の署名をし、押印する等し、裁判所に提出した事案では、①司法書士による非弁護士活動、②訴訟提起の効力、③Aさんによる追認の効果が問題になりました。

司法書士は訴訟提起後、準備書面、訴えの変更申立書、報告書、忌避申立書等の書面を上記訴状と同様にして作成し、裁判所に提出する等しました。Aさんは各期日に出頭し、司法書士はそれに同行して期日の傍聴をしましたが、弁論準備手続期日の傍聴は許されませんでした。Aさんは、審理の途中、本件の一切の訴訟行為を追認していました。

裁判所の判断

裁判所は、類似の事案において、司法書士が、訴状等の他人から委嘱された趣旨内容の書類を作成する場合であれば弁護士法違反の問題は生じないが、専門的法律知識に基づいて判断し、その判断に基づき書類を作成する場合には弁護士法違反になるとした上で、司法書士が弁護士法72条違反になることを承知しながら、包括的な委任を受けて提起した訴えは、民事訴訟法54条1項に違反し、無効であると判断しました。またこの場合、当事者において受任者が非弁護士であることを知りながら委任したときは、同項本文違反の訴訟行為を追認しても有効にならないと判断しました。
※富山地裁平成25年9月10日判決参照