1 はじめに
2025年11月1日から4日にかけ、当会国際委員会主催により、韓国法制度視察旅行が実施されました。1日及び2日は釜山広域市、3日光州広域市、4日はソウル経由で帰国という行程で行われました。総勢19名が参加しました。
2 甘川文化村
1日と2日は釜山観光を行い、甘川文化村を訪問しました。甘川文化村が作られたのは、朝鮮戦争から逃れてきた戦争難民たちが、山の斜面に家を建てて住み始めたことがきっかけです。貧しいエリアで暗いイメージだったため、明るくしようとカラフルに家の屋根に色を塗りました。世代が変わって、若い芸術家たちが、ポップでおしゃれだと考え、移り住み、今の形になったと言います。道や壁などに絵画が描かれて、文化芸術の村となり、世界中から観光客が訪れています。
3 光州弁護士会館
3日午後に、光州弁護士会を訪問しました。
光州弁護士会には778名の弁護士が登録しており、そのうち487名が、実際に光州広域市に居住しています。
弁護士会館に入居している弁護士事務所の21世紀法律事務所を訪問しました。代表弁護士から、「遠くから来ていただきありがとう。日本でまた会えること楽しみにしてる」という言葉をいただきました。

光州は、人権都市として有名です。会館1階の玄関には、光州弁護士会の第25代会長だった弁護士の銅像が置かれています。人権弁護士として多くの尊敬を集めた方だったとのことです。会長の銅像があるのは韓国で2箇所しかなく、ソウルと光州だけとのことでした(銅像の費用は所属弁護士から集めて作ったそうです)。
4 光州高等法院
3日午後、光州高等法院を訪問し、法廷傍聴を行いました。光州弁護士会館から歩いて3分ほどの場所に光州地方法院と、光州高等法院があります。過去に法院の中で、事件が起きたため、入る際は弁護士も含めて厳しい手荷物検査が実施されています。
光州高等法院の中には、郵便局と銀行が入っています。法院の業務では、郵便物や銀行との連絡が多いことが理由です。
建物の2階には、弁護士用の控室があります。弁護士控室には、オンライン裁判に参加するブースがあるほか、血圧を測る装置などが置かれており、弁護士が仕事をしたり、休憩したりできる場所です。弁護士会の事務員が常駐しており、弁護士の急な印刷物の対応などに協力しているとのことです。

法廷傍聴は個人再生の裁判を傍聴しました。
なお、地裁と高裁のすぐ向かいに、光州地方検察庁及び高等検察庁の合同庁舎がありました。建物は、法院よりも、気持ち大きいように見えました。
5 光州弁護士会との合同セミナー
3日午後、光州弁護士会館6階会議室で、当会及び光州弁護士会の合同セミナーが開催されました。今年のテーマは交通事故の損害賠償請求です。光州弁護士会副会長の挨拶では、「光の街、光州へようこそ。光州と愛知の弁護士会は毎年、相互訪問、セミナー開催を通じて交流を深めている。両国の法制度を理解する機会になることを期待する」と述べられました。
当会から青葉副会長も挨拶をしました。青葉副会長は、韓国語で挨拶したところ、光州側の出席者から拍手喝采をもらっていました。
6 韓国における交通事故の損害賠償請求の実務
合同セミナーでは、まず光州弁護士会キム・セムイ先生から、韓国の交通事故の損害賠償請求の実務について、紹介されました。
韓国の交通事故の損害賠償請求は、日本と似ていると感じました。

韓国では、1963年、自動車損害賠償保障法ができました。交通事故が起きた場合、自動車の運行者に原則、損害賠償義務を定めています。無過失免責の例外規定があります。
また、同法は、自動車の所有者に責任保険加入を義務付けています。加入が強制されるのは対人保障1というカテゴリーで、死亡した場合、上限1億5000万ウォン(日本円で約1500万円)。負傷の場合は、負傷の程度を示す等級により決まり、1級が3000万ウォン(約300万円から14級は50万ウォン(約5万円)。後遺障害も、障害の程度を示す等級によって決まり、1級が1億5000万ウォンで、14級が1000万ウォンです。対物賠償は、2000万ウォンまで強制加入保険である責任保険で保障されます。対人保障では上限額が非常に低いのが印象的ですが、日本には任意保険しかない対物保障があり、手厚さも感じました。
保険の種類が2つあり、強制加入の責任保険のほか、任意の共済保険があります。交通事故処理特例法において、共済保険に入っている場合、車両の運転者は、人身の交通事故を起こしたときでも、原則的に、起訴されないという規定があります。法的メリットを作ることで、任意保険への加入を促しているのが特徴的です。

7 日本の交通事故の損害賠償請求の実務
続いて、当会の丹羽洋典会員が、日本の交通事故の損害賠償請求の実務について、プレゼンテーションを行いました。「自分は健康のため、日本の納豆と韓国のキムチを毎日、一緒に食べるという日韓交流を実践している」というアイスブレイクをし、会場を沸かせました。
『交通事故実務の参考書籍として、日本には、「赤本」と「青本」と、当会の作っている「黄色本」がある。日本でも有名だ』と述べました。
セミナーの終わりに、当会国際委員会の瀧島委員長から、光州弁護士会へ、「黄色本」を贈呈しました。光州弁護士会からは、会長の奥様の製作した革製の財布が贈呈されました。

8 後記
これまで何度も海外旅行をしましたが、今回初めて体調を崩しました。体調管理の大切さをあらためて確認しました。今回、仁川空港から中部国際空港へ行く便に乗って帰ったのですが、出発ゲートがターミナルの端っこでした。海外で名古屋の知名度が不十分のためではないかと思いました。利便性向上のため、責任ある機関がより一層の取組みを進めることを期待します。
当会と光州弁護士会との交流は、今年で18年目です。その間、毎年交互に、訪問を繰り返してきました。私が韓国視察に参加したのは初めてですが、今回、大きな歓待を受けているのを見て、先人たちがこれまで構築してきた友好関係の深さを感じました。


