1 はじめに

8月2日から5日にかけて、当会国際委員会の企画として、中国の大連市にて視察旅行を実施しました。

視察旅行には、当会国際委員会委員長を含む7名が参加し、大連市律師協会、大連国際仲裁院、大連市破産管財人協会及び現地律師事務所を訪問しました。

今回の企画は、3月25日に当会と大連市律師協会との間で友好協定が締結されたことを受けて、更なる友好関係を深めるために実現されました。

2 大連市について

大連市は、中国東北部の遼寧省に位置する港湾・工業都市で、多くの日系企業が拠点を構えており、日本との関係も深い主要都市の一つです。

飛行機で名古屋(セントレア)から約2時間30分で行くことができ、アクセスも良好です。なお、時差が1時間あります。

3 大連市律師協会との交流座談会

大連市律師協会は、1987年に設立された日本でいう弁護士会の組織で、2025年7月末現在、約450の法律事務所に6514名の弁護士が所属しています。その内、45歳以下の弁護士が全体の64%を占めており、若い力が業界発展の原動力となっているようです。

また、18の専門委員会、24の選挙委員会及び3つの作業委員会を設置し、業界の専門化を推進しているとのことでした。

ただ、大連市司法局による監督を受けるなど、国家から完全に独立した形での弁護士自治がされていない点で、日本の弁護士会とは異なる面もあります。

大連市律師協会との交流座談会では、日中における弁護士の評価制度について、主に議論を交わしました。

中国では、毎年度、弁護士に対する業務評価が実施されており、その結果はウェブサイトで公開されるなど、一般の人々が各弁護士の評価が分かるシステムの構築がされています。その評価方法について、各法律事務所からの内部評価に基づき、律師協会が審査の上で評価をし、その結果を司法局に報告をするプロセスとなっています。

評価基準として、①法令順守、②協会義務の履行、③業務実績、④社会貢献(法律援助)、⑤懲戒履歴、⑥研修参加、の6つの側面から判断されるとのことでした。

評価結果につき、「合格」、「基本的に合格」、「不合格」の3つがあり、各弁護士証書にも記載がされます。評価の結果は、大手クライアントとの契約や大型案件の入札において重要な判断材料となっているようで、弁護士の評価制度について日中の違いを垣間見ることができます。

そして、当会と大連市律師協会との間で定期的な情報交換や交流会を継続的に実施することも相互に確認することができました。

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4 大連国際仲裁院との交流座談会

大連国際仲裁院では、施設見学をすると共に、主に大連仲裁委員会の現状や国際仲裁手続の運用等について議論が交わされました。

中国において、仲裁法が1996年に施行され、同年に大連仲裁委員会も設立されました。

中国全土では、280以上の仲裁機構が存在しているようで、仲裁員は約6万人(うち外国籍は3400名)いるとのことでした。なお、大連においては1244名の仲裁員がおり、うち外国籍は45名で、そのうち6名が日本国籍を有しているのが特筆すべき点となります。

また、中国における仲裁手続の特徴として、その審理期間の迅速性が挙げられるかと思います。中国の民事訴訟は、日本と異なり二審制を採用しており、第一審の標準的な審理期間は6か月以内とされていますが、仲裁は一審で完結し、審理期間は更に短くなります。

すなわち、大連仲裁機構においては、以下のとおり案件を4つに分類し、迅速な手続を実施しているとのことです。

  • 通常案件・・・3名の仲裁員で、基本的 には4か月以内で終了。
  • 国際案件・・・概ね4か月以内。
  • 簡易プロセス・・・1名の仲裁員で、2か月以内。
  • 迅速・少額案件・・・1万元以下の案件は15日以内で終了。

このように、審理期間の点で日本の裁判制度や仲裁制度とは大きく異なっていることに留意する必要があります。

他方で、大連仲裁機構において、迅速性だけでなく、質の高さも重視しており、定期的に事例集を発行することで情報提供もしていることが参考になるものと思われます。

今回の交流座談会を通じて、勉強会や模擬仲裁等の開催といった対面交流をする機会を設けることにより、親しい関係を築いていくことを相互に確認することができました。

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5 大連市破産管財人協会との交流座談会

大連市破産管財人協会は、201812月に設立された非営利性社会団体法人で、大連市中級人民法院が監督官庁となります。

同協会には現在85名の会員がおり、弁護士事務所だけでなく、会計士事務所、資産管理会社、競売会社等の多様な専門機関が加盟しています。

日本の破産管財人制度と異なり、中国では破産管財人協会に所属する者から破産管財人が選出される点に特徴があります。

今回の交流座談会では、日中における破産制度の違いを踏まえ、大連市律師協会破産清算委員会の会員も交えて、参加者の間で白熱した議論を交わすことができました。

特に、大連側の参加者からは、「破産」か「再生」によるかといった手続選択のあり方や手続期間といった内容から、破産管財人の選任方法や報酬等といった様々な質問が出されました。

6 現地律師事務所の見学

交流座談会の会場として、北京市盈科(大連)律師事務所と遼寧華夏律師事務所にご協力頂けると共に、事務所見学もすることができました。

受任件数といった実績をアピールする液晶モニターが設置されているなど、中国における法律事務所の雰囲気を味わうことができ、とても貴重な体験となりました。

7 最後に

今回の視察旅行では、多くの機構と交流を図ることができ、短いながらも大変充実したものとなりました。大連市律師協会及び大連国際仲裁院との交流が今後ますます深まることを祈念すると共に、今回の視察旅行で得られた経験を業務に活かせるように一層の研鑽を積んでいきたいです。