令和2年6月に成立した(施行は令和3年1月1日から)ベトナムの新しい投資法と企業法を紹介するセミナーが、オンライン形式のいわゆるウェビナーを利用して、東海地方の企業関係者及び当会の会員を主要な聴講者に想定し、ジェトロ名古屋と当会の共催で実施されました。講師は全員で3名、新しい企業法、投資法を含めたベトナム法令和訳をJICAベトナム法令和訳集の「ベトナム六法」(https://www.jica.go.jp/project/vietnam/021/legal/)に登載している当委員会所属の弁護士が名古屋から企業法、投資法に加えてベトナムへの投資の一般的説明を行い、企業法、投資法の改正が外国投資家のベトナムへの投資形態に与える影響につきグエン・ダン・ミン弁護士(ベトナム資格)がベトナム、ホーチミン市から詳細に説明し、さらにベトナムでの知的財産権の保護の状況についてハー・フイ・フォン弁護士(同上)がベトナム、ハノイから解説を加えるものでした。参加人数は合計で70数名ほど、東海地域のみならず日本全国から、さらにはベトナムからも参加があったようです。

 最初に当委員会所属の弁護士が近時の経済指標等のベトナムの基本情報を紹介した後、新投資法の説明から講義を始めました。旧法から現行法への変更点と比較すると、現行法から新法への変更はそれほど大きくはありません。その典型例としては、「市場アクセス条件」という外国投資家向け投資条件が新法に規定されていますが、それは現行法では他の法令で規定されている条件を投資法に集約して規定するもので、海外投資家に新たな投資条件を課すものではありません。新企業法については、少数株主権の強化、より機動的な資金調達を狙った発行可能株式・社債の種類増加、監査役会の任意的設置の場合を増やすなどより柔軟な機関設計、積極的M&Aの前提となる会社再編規定の洗練化等の変更がされていることを説明しました。

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                        <ハノイ市内朝の通勤ラッシュ風景>

 続いて、グエン・ダン・ミン弁護士より、現行法下では、意図的か否かを問わず外国投資家向けの投資規制を逃れる効果を持ち得るノミニーアレンジメント(ベトナム企業を受任者(Nominee)として、それを通じて出資する)に関して、新投資法で意図的な外国投資家向け投資規制潜脱の防止効果があると解しうる規定が導入されたため、この手法のリスクが増大することが説明されました。

 最後に、ハー・フイ・フォン弁護士が、その豊富な経験に基づき、知的財産権保護につき説明をしました。法令その他につき、ベトナムの知的財産権保護の枠組みは先進国のそれと同様であることを説明した後に、知的財産権が侵害される前の予防的方法、侵害された後の損害回復方法が紹介されました。

 国際委員会では、これからも、海外弁護士と協力しながら、国際取引に関するセミナーを提供していきます。令和3年1月にも下記のとおり、中国進出企業に関わる法律実務セミナーをzoomで開催する予定です。ご関心ある方は愛知県弁護士会までお問い合わせください。

中国進出企業に関わる法律実務セミナー案内.pdf