はじめに

 令和元年11月30日、弁護士に求められるスクールロイヤーのあり方をテーマに、シンポジウム「学校教育と『スクールロイヤー』~子どもの視点から考える~」が開催されました。

 元文部科学事務次官の前川喜平さんに講演に来ていただいたこともあり、会場が満席になるほどのたくさんの方にご来場いただきました。

第1部 基調講演

 第1部では、前川さんに、「学校における人権」をテーマに基調講演をしていただきました。

 前川さんによると、学校では、子どもたちの個人の尊厳が重んじられるべきであるにもかかわらず、日本の学校教育は、戦前の国家主義の影響から、愛国心や道徳心、自己犠牲など一定の価値観を子どもたちに押し付けており、子どもたちが自分で考えて行動する権利・自由がおろそかにされているということでした。

 また、ありとあらゆる子どもがいる学校という場所で、子どもたちの中のマイノリティー(発達障害や性的マイノリティーの子どもたち)の存在について、まず、学校が認識・理解することが重要であることなどをお話しいただきました。

第1部 基調講演

第2部 パネルディスカッション

 第2部では、基調講演をしていただいた前川さん、元名古屋市立中学校校長の上井靖さん、一宮市のスクールロイヤーである竹内千賀子会員をパネリストとし、粕田陽子会員(長久手市の学校巡回弁護士)をコーディネーターとして、パネルディスカッションが行われました。

 竹内会員からは、一宮市で実施されているスクールロイヤーの活動内容について紹介があり、弁護士が、事案を的確に分析したり、子どもの視点からアドバイスしたりすることで、紛争の拡大を防ぐことが可能であるという話がありました。

 上井さんからは、教育現場で長く勤められていたご経験から、教師は視野が狭くなりがちであり、弁護士という第三者に、法律や事例等を用いて違う視野を提供してもらえることには意義があるというお話がありました。

 前川さんからは、文部科学省が提案しているスクールロイヤーは、モンスターペアレント対策以上のものではなく、子どもの視点に立ったものではないというお話がありました。

第2部 パネルディスカッション

おわりに

 基調講演で前川さんがご指摘された学校教育の問題点について、教育、福祉の視点に加え、子どもの人権の視点を持つことで、新たな気付きを得たり、紛争の拡大防止や解決の道筋が開けたりする可能性があるのではないでしょうか。

 スクールロイヤーとして活動する際には、子どもたちの視点に立って、子どもたちを第一に考えることが大事であることを再確認させられるシンポジウムとなりました。