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 6月23日(土)、東別院ホールで上記シンポジウムを開催しました。現場で外国人教育に関わっている方や日弁連、関弁連の弁護士等多数のご参加をいただきました。

 第1部では、愛知淑徳大学の小島祥美准教授に中部地域での外国人の子どもの教育についてご講演いただきました。小島氏は、当時約4000人の外国人住民が暮らす岐阜県可児市において、学齢期の子どもがいる外国人家庭を訪問して実態調査を行うとともに、日本語教育の先進的モデルを構築したり、不就学児童を0人にする等、第一人者として活躍されています。

 現在の状況として、外国人の子どもの教育に関する行政の対応に格差があり、子どもの持つ可能性が、良い出会いに恵まれるか、自分で進路選択ができるか、居場所があるかといった要素に左右されているということです。

 プライベートもなく自分でできることはすべてやってきた。後は法的整備を進めるために、弁護士会等の協力が必要であると訴えている姿が印象的で、手を尽くして活動されてきたことが伝わってきました。具体的には、①外国人学校の中学から日本の公立高校への進学が地域によって不可であること、②学校保健安全法が外国人学校に適用されていないこと、③外国人生徒に対する高校入試措置が地域により異なること、④学齢超過者を受け入れる夜間中学等の制度が不十分であることについて、制度的解決が必要とのことです。

 第2部では、外国人教育の先進地域である松阪市の教育委員会の奥田健司氏と、13歳で来日し現在は行政書士として活動されている日系ブラジル人の渡辺マルセロ氏に参加していただき、小島氏と3人でパネルディスカッションをしていただきました。

 1つ目のテーマは、日本語教育についてです。松阪市では来日したばかりの児童に対する集中的な日本語教育、進学時の情報提供等の他、就学前教育も行っています。このような自治体は少なく、多くの地域では、担当教員の資質に頼っている状態です。渡辺氏は、中学の担任に恵まれて、日本語の壁を乗り越えられたとのことですが、すべての児童に機会を保障するためには、多くの地域で充実した制度が整えられるよう、人権保障の観点から整備を進めていく必要があります。

 2つ目のテーマは、進学や就職についてです。愛知県の外国人生徒の高校進学率は26.5%にとどまっています。進学を希望しているものの、制度不備、学力不足、経済的困難等が原因となってこのような状況となっているとのことです。松阪市では、上記のような制度を整備して以降、進学率が向上しており、進学等は支援制度の有無に左右される側面が大きいことがわかります。

 3つ目のテーマは、アイデンティティの問題についてです。子どもたちが学校でついていけず自己肯定感を持てなかったり、親が工場で勤務する姿を見て、自分の将来もそのような道しかないと考えたりといった傾向があるようです。学校教育に、ポルトガル語を選択科目として取り入れたり、ルーツを考える取り組みをしたりなどで良い効果が生まれたそうですが、根深い問題であると思います。

 最後に、渡辺氏から、教育についてこれまでは民間でなんとかするしかない部分が大きかったが、弁護士会とシンポジウムができたことで、行政への働きかけに期待が持てるというお話しをいただきました。

 今回のシンポジウムを、日本社会の一員である子どもたちの将来のために、私たちができることに取り組んでいくための機会としなければならないと思います。