愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 人権擁護委員会 > 人権侵犯救済申立事件

人権侵犯救済申立事件

愛弁発第173号 平成22年9月3日

名古屋矯正管区長  殿

愛知県弁護士会 会 長  齋 藤  勉

要 望 書

 

 貴職におかれましては,日頃,法務行政の適切な執行を図られておられますことに敬意を表します。
  さて,愛知県弁護士会は,本日,○○○○申立にかかる平成17年度第30号人権侵犯救済申立事件につき,名古屋刑務所に対し,B型・C型ウイルス性肝炎患 者で肝がんの発生リスクが高い被収容者に対して,肝がんの早期発見のための適切な検査を実施するとともに,肝がんの治療を要する被収容者については,直ち に自施設内において治療を開始するか,治療を実施可能な医療刑務所へ移送する等の適切な処置をするよう,勧告いたしました。この内容を是非とも貴職にご認 識いただきたく,同所宛の勧告書の写しをご送付いたします。
  本例は,名古屋刑務所に在監中の者が,肝がんの超高危険群患者でありながら,同所において適切な検査を受けられず,また,肝がんと判明したあとも肝がんに 対する治療が実施可能な施設に移送されず治療開始の遅延が認められた事案であります。同人は,すでに肝がんによって死亡するに至っており,同人が侵犯され た人権の回復は不能でありますが,B型及びC型肝炎ウイルス感染者は,日本全国で約350万人(総人口の数%)に及ぶと推計されており,現在及び今後刑事 施設に収容される者の中にも,相当数のB型・C型肝炎ウイルス感染者が含まれることは確実であり,同様の肝がんスクリーニングの懈怠または肝がん治療開始 の遅滞が再発する懸念は大きいといわざるをえません。
  従いまして,貴職におかれましては,以上の事態を今一度ご認識いただき,

  1. B型・C型ウイルス性肝炎患者で肝がんの発生リスクが高い被収容者に対して,
    肝がんの早期発見のための適切な検査を実施するよう体制を整備すること
  2. 肝がんの治療を要する被収容者については,直ちに必要な専門的医療を受けることができるよう,刑事施設における医療体制を改善すること

に,ご尽力いただきたく要請する次第です。

以 上