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人権侵犯救済申立事件

平成22年3月31日

法務大臣  千葉 景子 殿

愛知県弁護士会 会長 細井 土夫

勧  告  書

 当会は、岐阜刑務所に在監中である申立人○○○○に係る人権救済申立事件(平成19年度第36号事件)につき、以下のとおり勧告する。

第1 勧告の趣旨

  1. 申立人が当事者となった民事訴訟手続において,申立人が出廷を申し出たのに対し,岐阜刑務所が不許可としたのは,申立人の裁判を受ける権利を侵害 したものであるので,今後,刑事被拘禁者が裁判所から呼出状が送付されるなど出廷を求められ、それを理由として、岐阜刑務所に対し出廷を申し出た場合に は、当該具体的事情の下で、出廷を許可することによって岐阜刑務所内の規律及び秩序の維持に放置することができない程度の障害が生ずる具体的蓋然性がある と十分な根拠に基づいて認められ、そのため出廷を制限することが必要かつ合理的と認められるときに限って不許可とし、原則として出廷を許可するよう指導・ 助言するよう勧告する。

  2. 貴職は、全国の刑事施設に対し,上記のとおり運用するための具体的処理規程を策定するとともに、例外的に不許可とする場合には,刑事被拘禁者に具 体的理由を告知するなどして、刑事被拘禁者の裁判を受ける権利、自ら出廷し訴訟活動を行い公正な審理を受ける権利の実現に十分に努めるよう、指導・助言す るよう勧告する。

第2 勧告の理由

1 申立の概要

 申立人は、札幌地方裁判所において,無期懲役の実刑判決を受け,平成17年11月より岐阜刑務所に 在監中の者である。 申立人は,本人訴訟として提起していた岐阜地方裁判所に係属する損害賠償請求事件について,岐阜刑務所に対し,出廷の許可を申し出たところ,岐阜刑務所か ら不許可とされた。申立人は出廷の不許可が人権侵害であると主張し,岐阜刑務所に対し,民事裁判への出廷を制限する取り扱いの改善を求めている。

2 調査の結果

 申立人から聴取した事情等や貴所から得た回答の概要は以下のとおりである。

(1)申立人に対する調査結果

① 日時・場所等

日時 平成20年3月10日午後1時25分~午後3時30分
場所 岐阜刑務所

② 民事事件の事案概要

 申立人と家族のプライバシーを含む個人情報がYから第三者(受刑者)へ送付された。そして,Yが個人情報保護に努めず,それらを交付し,第三者から多数の受刑者に秘密漏洩がなされた。
 そこで,平成18年12月9日,申立人からYに対し,損害賠償請求訴訟を提起した(岐阜地方裁判所民事第●部●係,事件番号平成18年(ワ)第●●●号)。
 その後,平成19年10月31日,Yとの間で示談が成立し,同年11月1日付け訴え取下げにより訴訟は終了しているが,申立人としては,将来のためにも,人権救済申立は維持したい意向を有している。

③ 期日の経過

 第1回口頭弁論期日の指定後,4,5回に亘り書面による準備手続を重ねた。その後,申立人は準備書面を3,4回提出し,自己の主張を尽くすことはできた。
 しかし,申立人の陳述が留保されているので,出頭が必要である。
 そこで,3,4回に亘って,出廷を認められないと敗訴に なる不利益を受ける旨の理由を記載して,出廷願いの願箋を提出したが,いずれも,相手方の責任者から,所長決済により不許可である旨口頭で伝えられた。例 えば,平成19年7月13日に口頭弁論の期日指定を受けたところ,同年5月16日付けで出廷の申出をしたが,同月23日付けで出廷不許可となった。
 また,平成19年11月9日にも口頭弁論の日の指定を受け,同年10月1日に出廷願いの願箋を提出したが,出廷が不許可とされた。
 なお,本件訴訟は本人訴訟で提起し,法テラスに代理援助の申請を行ったが,平成19年9月25日で援助不開始の決定を受けている。

(2)岐阜刑務所からの解答要旨

 岐阜刑務所に対して,申立人に関する裁判所への出廷に関する事情と刑事被拘禁者の裁判所への出廷に関する扱いについて照会を行ったところ,岐阜刑務所からは以下のとおりの回答を得た。

  1. 受刑者の民事訴訟への出廷を認めるか否かの判断基準については,刑の執行の性質,進行状況から見て受刑者自身が出廷することの必要性,出廷が刑の執行に及ぼす影響,訴訟代理の制度及び戒護警備の難易等の諸事情を総合的に勘案し判断している。

  2. 岐阜地方裁判所(損害賠償統制給事件,平成18年(ワ)第●●●号事件)について
    • ア 申立人から裁判所への出廷願いがなされた回数 2回
    • イ 出廷願いの年月日  平成19年5月16日及び同年10月1日
    • ウ 各出廷願いについて,申立人が出廷を求めた裁判期日の具体的内容口頭弁論期日
    • エ 各出廷願いに対する許可・不許可の結論 全て不許可
    • オ 出廷願いを不許可とした理由    上記①のとおり
    • カ 弁護士を選任する経済的資力がない場合や,法律扶助制度の利用が困難な場合でも,申立人の出廷を認めないとする理由

  3. 過去の事例について
    過去10年間で民事訴訟への出廷を認められた事例の有無,認めた件数,事案の概要,出廷を認めた理由,過去10年間で出廷を認めなかった件数,事案の概 要,出廷を認めなかった件数,事案の概要,出廷を認めなかった理由について件数は不詳。受刑者の民事訴訟への出廷については,上記①で述べたとおり。

3 判断
(1)出廷権の憲法上の保証

 何人も自己の権利又は利益が不法に侵害されていると考えるときに裁判所に対し,その主張の当否を判断し,その損害の救済に必要な措置をとることを求める権利を有している(裁判を受ける権利 憲法32条)。
 いかに諸種の権利自由が保障されていたとしても,それが侵害されたときに裁判上の救済が認められないのであれば,権利自由が実質的に保証されていることには ならない。従って,裁判を受ける権利は,憲法や法律上の権利自由を実質的に保障するものとして重要であり,時に「基本権を確保するための基本権」と称さ れ,まさに法の支配の不可欠の前提をなすものなのである。法的紛争の当事者が当該紛争の終局的解決を裁判所に求めうることは,法治国家の根幹に関わる重要 な事柄であるから,裁判を受ける権利は最大限尊重されなければならない。
 そして,裁 判を受ける権利が,基本権を確保するための権利として以上のような意義を持つものである以上,その「裁判」が,当然,一定の内実を伴なったものでなければ ならない。少なくとも,中立公平な第三者による適正な手続に従った実効的な救済方法であることが要請され,このために憲法82条1項は,裁判の公正を確保 する趣旨から「公開の対審」手続(当事者が裁判所及び相手方の面前で口頭にて自己の主張・立証を行う機会が十分に与えられること)を保障している。
 さらに,そもそも裁判を提起できたとしても,提起後に,「公開の対審」のために,当事者として出廷して現実に訴訟追行に関する行為ができなければ,適切且つ 満足な主張,立証は果たせない。その意味で,憲法32条における「裁判」を受ける権利の保障には,憲法82条1項の保障する「公開の対審」のために裁判所 に出廷する権利も含まれていると言わなければならない。
 なお,民事訴訟は,処分権主義,弁論主義を採用し,後述のように,不熱心訴訟追行への対処と して訴えの取下げ擬制の制度を設けているが,この点については,憲法が裁判を受ける権利の一環として出廷権を保障していることを前提としなければ,こうし た制度を適切な制度として正当化することはできない。

(2)刑事被拘禁者の出廷権

① 憲法上被拘禁者に保障が及ぶこと

 上述したような裁判を受ける権利の重要性に鑑みれば,裁判を受ける権利及びその内実としての出廷権は,刑事被拘禁者といえども,人身の自由以外の基 本的人権は一般市民同様に享有しているものである以上,被拘禁中は,たとえ身体,精神的自由権,財産権,名誉権等が侵害されても,裁判を提起し,主張立証 のために必要な場合に自ら出廷し審理を尽くして公正な裁判を受けることは諦めよ、などという考えは到底認めることはできない。
 法的紛争については,時効による権利消滅の危険性,権利侵害の拡大を早期に防止する必要性,そして時間の経過により証拠資料が消滅する危険性が伴っ ているのであるから,刑事被拘禁者といえども,裁判提起を釈放後まで控えることができないことは自明の理であり,早期に裁判による権利の救済を図る必要が あることは一般市民と何ら異なるものではない(さらに,死刑確定者,無期懲役受刑者について言えば出所自体が不確定であり,「釈放後」を想定することは困 難である。)。
 なお,出廷権については,訴訟代理制度や法律扶助制度が存在することを根拠にして,出廷権を認めず,あるいはこの権利を制限的なものとして扱う見解や裁判例があるところであるが,容認できない。
 弁護士強制の制度をとらない我が国においては,訴訟代理や法律扶助の制度は,あくまで本人の訴訟追行を十全ならしめるための補充的な制度に過ぎな い。弁護士に受任拒否の自由があり,仮に弁護士費用が準備できても,必ずしも訴訟代理人が確保できるとは限らない。また,法律扶助も,扶助する事件に条件 をつけて審査を行い選別することが許されているのであるから,扶助を受けられない場合も当然に生じ得る。従って,これらの制度の存在をもって,出廷権を否 定し,あるいは制限する根拠とすることができないことは明らかである。

② 刑事被拘禁者の出廷が認められない場合の不利益

 なお,刑事被拘禁者の出廷が認められない場合,刑事被拘禁者は民事訴訟法上,次のような不利益を免れないのが実際である。
 まず,相手方出席の場合は,初回については擬制陳述(民事訴訟法158条)があるが,当該期日の弁論内容を把握し,その場で反論することはできない。続行 期日では擬制陳述は認められないため,新たな論点について,仮に書面で反論を行っても裁判資料としては認められず,出頭当事者の弁論のみに基づいて審理が 進められる。また,証拠調べは当事者不出頭でも可能であり(同法183条),この場合,欠席当事者の反対尋問等防御権は明白に侵害される。このように,実 際の制度では,出廷が認められないと,武器平等・当事者対等の原則に明白に違反し,公正な審理を受ける権利は明らかに侵害される。
 また,相手方が口頭弁論期日に欠席した場合には,裁判所としては,職権で次回期日を指定するか,又は指定せずに,民事訴訟法263条を適用して,1ヶ月以 内に期日指定の申立がない場合や,又は連続して2回出頭がない場合には,訴えの取下げ擬制により訴訟を終了することができるものとされている。例外とし て,審理の現状に基づき判決言渡しができる旨の規定が新設されたが(同法244条),訴えの取下げ擬制が本則とされ,この規定による対応は極力抑えられる べきものとされている。従って,実質的には,裁判を受ける権利が剥奪されるに等しい結果となるのである。
 このように,出廷が認められない場合,刑事被拘禁者には看過できない不利益が生ずるのであり,そうであるからこそ,刑事被拘禁者の出廷には権利性が認められなければならないのである。

(3)刑事被拘禁施設長の裁量の有無

 ① もっとも,刑事被拘禁者は,拘禁目的の達成と所内の規律保持の要請に照らし,移動の自由及びそれに伴うその他の自由の制限は一般的に甘受しなければならない。
 しかしながら,個人の尊厳を根源的な価値基準とする(憲法13条)憲法下の刑事施設としては,刑事被拘禁者に対する権利の制限は,拘禁目的と施設管 理の規律保持のために必要とされる必要最小限の範囲内のものであって,初めて容認されるのであり,このことは出廷権に関しても同様である。

 ② この点,刑事被拘禁者の出廷を容認することに対しては,施設に対する牽制目的等で申立を反 復したり,荒唐無稽な内容や主張自体に理由のないような提訴が刑事被拘禁者間の模倣によって多発し,濫訴的傾向を招き,施設内の秩序維持,護送等の面での 職員の負担を増大しかねない等の疑義も生じうる。
 また,管理権を有する刑事被拘禁施設長が,当該訴訟事件の性質,出廷が刑の執行に及ぼす影響,護送の難易等を総合的に判断して,裁量により出廷の拒否を決定できるとする見解もあり,出廷が問題となった裁判例の多くは,こうした見解に立っている。
 しかし,そもそも,出廷権は,憲法や法律上の権利自由を実効化するために不可欠な裁判を受ける権利の内実をなしているのであり,以上のような見解等は,上述した出廷権の重要性や出廷が権利として認められない場合の現実の弊害を完全に看過するもので相当ではない。

 ③ そして,実際にも,訴訟事件の性質,種類を考慮するとはいえ,記録を精査しておらず,訴訟に参加していない刑事拘禁施設長が,訴訟の進行状況を勘案して,出廷の要否を適切に判断できるとは考えられない。
 一方,施設に対する牽制的目的での訴訟提起は,無内容,模倣等による訴権の濫用の危険に関しては,確かに,そのような事態があり得ることは否定し得 ないが,出廷権の権利の重要性や,出廷の可否の判断を刑事被拘禁施設長の裁量的な判断に委ねたので,濫用か否かの判断自体が恣意に流れる危険,弊害が伴う ことを考えると,やはり,刑事被拘禁施設長に広範な裁量的判断を委ねることを肯定する理由にはなり得ない。訴状審査や事前の争点整理の段階での裁判所の判 断によって,訴権の濫用と求められた場合には,訴えの却下がなされ得るのであるから,訴権の濫用の危険については,これを過大視してはならない。
 さらに,施設管理上の負担については,電話を利用した弁論準備手続(民事訴訟法170条3項),書面による準備手続(同法175条)電話による協議 (同法176条3項),集中証拠調べ(同法182条)を利用すれば,現実に裁判所へ押送しなければならない回数は相当程度限定できるし,押送等に要する人 的負担等については,抑も国家が身体拘束している刑事被拘禁者にも等しく裁判を受ける権利を保障する以上,出廷に必要な事務負担は国家として当然受忍すべ きことと考えられるのである。

 ④ 以上からすれば,刑事被拘禁施設長に対し,出廷の要否を判断する上で広範な裁量を認めるのは妥当ではなく,むしろ,出廷は,原則として認められるべきである。
 その上で,例外として,当該具体的事情の下で出廷を許すことによって拘禁目的の達成又は刑事施設内の規律及び秩序の維持に放置できない程度 の障害が生ずる具体的蓋然性があることが十分な根拠に基づいて認められ,そのために出廷を制限することが必要且つ合理的と認められる場合に限って,出廷す る権利の制限が許されると考えるべきである。
 例えば,被拘禁者が,単に出廷の機会を利用して傍聴に来る関係者と接触を図るなど,出廷を道具として他の目的を果たそうとし,出廷が権利濫用になる ことが具体的な根拠に基づき明白である場合,あるいは出廷に伴う護送によって被拘禁者本人の健康状態が悪化するおそれが明らかな場合などが,こうした例外 的な場合である。

(4)岐阜刑務所の人権侵害の有無

 本件においては,岐阜刑務所は2回に亘る申立人の口頭弁論への出廷願いを全て不許可とし,一度も出廷を認めていない。
 そして,岐阜刑務所の照会結果から認められる岐阜刑務所の刑事被拘禁者の出廷許可申請に対す る姿勢は,そもそも出廷の拒否については,所長の裁量判断事項とし,その判断に際しての基準は単純な利益考量であり,あるいは抽象的に管理運営上の理由を 指摘するだけにとどまっている。
 当該具体的事情の下で出廷を許すことによって拘禁目的の達成又は刑事施設内の規律及び秩序の 維持に放置できない程度の障害が生ずる具体的蓋然性があることが十分な根拠に基づいて認められ,そのために出廷を制限することが必要かつ合理的と認められ るに足りる特別な理由があるか否かを,具体的に検討した形跡はなく,また少なくとも,本件においてその旨の主張や疎明は一切なされていない。 上記で検討したように,特別な事情のない限り,出廷を許可すべきである以上,申立人の出廷の申出に対する不許可処分は,憲法上保障されている申立人の出廷 権を侵害するものであると言わざるを得ない。

(5)法務大臣による人権侵害

 法務大臣には,法務省矯正局を通じて,矯正行政全般に関する事務を司る法的権限があり,各刑事施設が,受刑者,死刑確定者などの刑事被拘禁者の権利を侵害 している場合には,その是正を指示,指導し,適法かつ妥当な刑事被拘禁関係を確保,維持するよう指導監督する責務と権限が存する。
 刑事被拘禁者の出廷権に関しても,法務大臣には,法務省矯正局を通じて,各刑事施設に対し,裁判所からの呼び出し状が送付されるなど刑事被拘禁者が出廷を 求められた場合,原則として出廷が許可されるべきであり,例外として当該具体的事情の下,出廷を許すことによって刑事施設内の規律及び秩序の維持に放置することのできない程度の障害が生ずる具体的蓋然性があると十分な根拠に基づいて認められ,そのため出廷を制限することが必要かつ合理的と認められるときでなければ,刑事被拘禁者を出廷させるよう指示,指導をする責務があると考えられる。各刑事施設が上記の要件がないにもかかわらず,刑事被拘禁者を裁判所に 出廷させないという運用をしていることの報告があり,あるいはその事実を覚知した場合には,これを是正すべく,刑事施設に対し,出廷を許可するよう指示, 指導をする責務がある。
 法務大臣が,法務省矯正局を通じて,岐阜刑務所から,申立人が,平成19年5月16日と10月1日の2度に亘って岐阜刑務所に対して出廷の許可を求めていたことについて,報告を受けて覚知していたか否かについては明らかではない。
 しかしながら,下記記載の各弁護士会の勧告の存在に照らせば,多くの事案で刑事施設が上記の出廷を不許可とする要件がないにもかかわらず,刑事被拘禁者の民事裁判への出廷を認めていない実態を知り,又は知りうる立場にあった。
 従って,法務大臣は,刑事被拘禁者の出廷を不許可とする運用を放置し,法務省矯正局を通じ て,刑事施設に対し,上記出廷を不許可にする要件がない場合にも出廷を許可するよう指導・助言を何ら行ってこなかったと認められ,岐阜刑務所による申立人の出廷の申出を全て不許可にしたのは,かかる法務大臣の対応に影響されたものであると推認すべきであるので,法務大臣も申立人の出廷権を侵害したものと判 断せざるを得ない。
 よって,法務大臣においても,法務省矯正局を通じて,岐阜刑務所を適切な指導監督するのを怠って,申立人の出廷権を侵害した違法があることは明らかである。

(6)各弁護士会による勧告の存在

 なお,これまで,弁護士会により,本件申立と同種の出廷不許可に関する人権救済申立において,以下の10の勧告が出されているので,掲記するものである。

  • ① 新潟県弁護士会 平成11年8月2日勧告 新潟刑務所・法務省矯正局宛
     未決被拘禁者が賃借するマンションに関し,賃貸人より明け渡し訴訟がされた民事訴訟で,第1回期日の出廷が許可されず敗訴した事例

  • ② 大阪弁護士会 平成12年3月30日勧告 大阪拘置所・法務省矯正局宛
     鼻の病気の治療が悪かったとして死刑確定者が関西医科大学を被告とした損害賠償請求訴訟と,同じく国を被告とした損害賠償請求訴訟において,出廷を全て不許可とされた事例

  • ③ 徳島弁護士会 平成13年6月25日勧告 徳島刑務所宛
     受刑者が国家賠償請求訴訟を提起し,4回の期日の内2回を出廷不許可とされた事例

  • ④ 仙台弁護士会 平成16年2月4日勧告 宮城刑務所宛
     無期懲役受刑者が,6件の国家賠償請求訴訟を提起したが,第1回,第2 回期日の出廷を不許可とされた事例

  • ⑤ 兵庫弁護士会 平成17年12月2日勧告 神戸刑務所宛
     受刑者が神戸刑務所を相手とした国家賠償請求訴訟を提起したが,第1回,第2回期日の出廷を不許可とした事例

  • ⑥ 仙台弁護士会 平成17年12月2日勧告 宮城刑務所宛
     受刑者が国や仙台地方裁判所や仙台簡易裁判所を相手として,国家賠償請求訴訟や行政処分取消訴訟を提起したが,第1回期日は出廷許可したが,第2回期日は不許可とした事例

  • ⑦ 徳島弁護士会 平成18年3月30日勧告 徳島刑務所宛
     受刑者が徳島刑務所を相手とした国家賠償請求訴訟を提起したが,4回の期日を全て不許可とされた事例

  • ⑧ 富山弁護士会 平成19年3月23日勧告 富山刑務所宛
     受刑者が国を相手に国家賠償請求訴訟を提起したが,合計10回出した地裁及び高裁への出廷願いを全て不許可とされた事例

  • ⑨ 兵庫弁護士会 平成19年7月23日勧告 神戸刑務所宛
     受刑者が国を相手とする3件の損害賠償請求訴訟を提起したが,全て出廷不許可とされた事例

  • ⑩ 日本弁護士連合会 平成19年11月6日勧告 法務大臣,法務省矯正局長,東京拘置所長宛
     受刑者が他の受刑者や関係者を相手とした損害賠償請求訴訟,債務不存在確認等請求訴訟を複数回提起し,相手方の受刑者らから貸金返還等請求訴訟等を提起されていたが,少なくとも5件の事件で合計9回出廷願いを拘置所に提出したが,全て不許可とされた事例

4 結論

 よって,当会は,貴職に対し,勧告の趣旨記載のとおり勧告するものである。

以上