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本部長就任のご挨拶

令和5年度 愛知県弁護士会 会長
秘密保護法・共謀罪法対策本部 本部長
小  川    淳

 皆様におかれましては、日頃より弁護士会の活動にご理解、ご協力いただき、ありがとうございます。本年度の秘密保護法・共謀罪法対策本部の本部長に就任し半年が経過しました。今後とも宜しくお願い申し上げます。
 秘密保護法・共謀罪について、今までの活動について振り返りつつ、本年度における動向等についてお伝えしたいと思います。

 2013年12月に「特定秘密の保護に関する法律」(以下「秘密保護法」)が制定されてから10年が経過しようとしています。また、2017年6月に「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「共謀罪法」)が制定されてから6年が経過しました。当対策本部は、日本弁護士連合会の秘密保護法・共謀罪法対策本部とも連携しつつ、上記2法について、制定に反対するとともに、制定後はそれらを廃止させ、あるいは実質的に発動させないために、諸活動を企画してまいりました。

 上記2法が制定された当時、当会は会長声明において、秘密保護法は、「憲法が保障する国民の知る権利やプライバシー権を侵害し、政府と官僚による独裁を招き、国を戦前に逆戻りさせる悪法である」と抗議し(2013年(平成25年)12月9日「特定秘密保護法の強行採決に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」)、また、共謀罪法は、「警察による社会の監視が日常化し、市民の運動・活動や企業・団体の活動に重大な萎縮をもたらし、人権の根幹である思想良心の自由が侵される危険を高める」と抗議しました(2017年(平成29年)6月15日「いわゆる『共謀罪』法の成立に抗議する会長声明」)。

 あらためて秘密保護法について考えると、たしかに国家の安全保障に関する情報の中には、特に秘匿を要するものがあることは否定できません。しかし、何を特定秘密として指定するかは、第一次的には行政機関がこれを判断せざるを得ないものであるため、政府の恣意的な運用により、特定秘密とされる情報の範囲が不当に拡大され、国民の知る権利が侵害される危険があると言えます。
 また、「特定秘密」の漏えい・取得行為やこれら行為の未遂・共謀等を広く処罰対象にすることは、国民や報道機関が国に関する情報にアクセスする行為を萎縮させ、取材・報道の自由を阻害する結果を招来しかねません。秘密保護法については、廃止を含む抜本的な見直しが必要です。
 次に、共謀罪は、我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容をもつものであり、今後、恣意的に運用されることがないように注視をするとともに、成立した法律の廃止に向けた取組を行う必要があります。
 加えて、本年度以降、政府において経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度についての議論が本格化しております。たしかに経済面においても国家の安全保障に関する、秘匿を要する事項があることは否定できませんが、秘密保護に関する問題が複層化し、国民の知る権利が侵害される危険が高まっており、今後、法制度や運営面を注視する必要があると考えます。

 そもそも、日本国憲法の大原則の一つである民主主義は、市民が国に関する情報にアクセスできることが基礎となっています。しかしながら、秘密保護法や共謀罪法は、運用によっては、情報の公開を禁止して市民から情報を遮断し、市民が自由に情報について知り、語る自由を圧殺しかねません。秘密保護法や共謀罪法が日本を戦前のような暗い世の中に変えてしまうことのないよう、それらの運用を監視し、引き続き廃止に向けて運動を続けていく必要性がますます高まっていると考えます。

 当対策本部の活動に対して、皆様のご理解、ご支援をよろしくお願いいたします。

以上

土地規制法の「注視区域」、愛知県内にも候補地

秘密保護法・共謀罪法対策本部 委員
濵  嶌  将  周

 9月11日、内閣府は、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(以下「土地規制法」といいます。)にかかる第6回土地等利用状況審議会を開催し、3回目となる区域指定の候補地180か所を公表しました。この地域では、愛知県10市町、岐阜県3市、三重県5市町が含まれています。

 愛知県下の候補地(いずれも「注視区域」)は以下のとおりです。
・区域:瀬戸市、豊田市、岐阜県土岐市/施設名:三国山無線中継所施設
・名古屋市/守山駐屯地
・名古屋市、春日井市、小牧市、西春日井郡豊山町/小牧基地、名古屋飛行場
・岡崎市、豊川市、新城市/本宮山無線中継所施設
・瀬戸市、春日井市/高蔵寺分屯基地、高座山無線中継所地区
・春日井市、小牧市/春日井駐屯地
・豊川市/豊川駐屯地
・豊川市、蒲郡市/宮路山無線中継所

 なお、岐阜県各務原市/岐阜基地、岐阜高射教育訓練場および三重県津市、三重県伊賀市/笠取山分屯基地、白山高射教育訓練場は、「特別注視区域」の候補地です。

 「注視区域」(重要施設の敷地の周囲おおむね1000m。守山駐屯地でいえば、バンテリンドームナゴヤ(旧ナゴヤドーム)に達する広さです。)に指定されると、国が、土地等の利用状況の調査と利用の規制をできるようになります。
 この利用状況調査は恣意的に行われるおそれがあり、さらにその調査のため自治体等に情報提供を求める得ることから、市民のプライバシー権や思想良心の自由、表現の自由等、基本的人権を著しく害する危険があるものです。
 また、利用規制についても、要件が曖昧で、注視区域内の土地等の利用者の財産権を不当に侵害する危険性があるものです。

 当会は、土地規制法が国会に上程された際、同法案の制定に反対し、廃案を求める会長声明を発出しましたが(2021年(令和3年)6月9日)、同会長声明で指摘した同法の危険性は、現時点でも解消されていません。
 今後も、土地規制法の廃止を求め続けるとともに、同法を濫用させない働きかけが必要です。

以上