覚えていますか?

 秘密保護法(特定秘密の保護に関する法律)は、2013年12月6日、第185回国会で成立し、同月13日に公布、2014年12月10日に施行されました。

 共謀罪(改正組織的犯罪処罰法)は、2017年6月15日、第193回国会で成立し、同年7月11日に施行されました。

 どちらも、法の疑問点が解消されないまま、採決が強行されて成立した法律であり、成立当時は、マスコミにも大きく取り上げられました。市民デモなども盛んに行われ、当対策本部もデモ行進を行いました。

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[2013年10月、秘密保護法制定に反対するデモ行進]

「秘密保護法」ってなに?

 秘密保護法は、漏えいすると国の安全保障に著しい支障を与えるとされる情報を「特定秘密」に指定し、それを取り扱う人を調査・管理し、「特定秘密」を外部に知らせたり、外部から知ろうとしたりする人などを処罰することによって、「特定秘密」を守ろうとする法律です。

 外国に国家機密を知られてはならないことは理解できますが、政府の判断だけで「特定秘密」に指定してしまうと、主権者である国民に何を秘密にしたのか全く分からなくなります。「特定秘密」を取り扱う人にとっては、調査・管理の対象となるため、プライバシー侵害となり、「特定秘密」を外部に知らせていないのに処罰されそうになった場合、裁判で「特定秘密」を明らかにできないことから冤罪の危険があります。
 また、秘密保護法の運用を監視する情報監視審査会の報告によると、「特定秘密」の保存期間を1年未満にすることで、その「特定秘密」を廃棄して、事後に秘密にする必要があったか審査できなくなる運用がなされていました。

「共謀罪」ってなに?

 共謀罪は、盗む、脅すなどの犯罪の実行行為が行われる前段階の犯罪の計画及び準備行為を処罰する法律です。

 共謀罪があれば、犯罪被害が発生する前に逮捕できるから安全な社会になるとも考えられます。しかし、日本の刑法は、犯罪被害の結果を発生させた行為(既遂)を処罰するのが原則ですので、計画及び準備行為を処罰する共謀罪の成立により処罰の範囲が飛躍的に拡大しました。
 また、既遂になれば罰金刑も定められている公務執行妨害罪が、計画及び準備行為段階だと5年以下の懲役となるなど、刑の不均衡が著しいです。
 犯罪の計画を発見するためには、どのような捜査をすればよいのでしょうか。スマートフォンやパソコンの履歴、SNSへの投稿の調査など、個人のプライバシー侵害となる捜査をしなければ犯罪の計画を見つけることはできませんし、冗談や小説のネタとして書いたものが犯罪の計画とされたら、反論することが難しいです。
 準備行為については、共謀罪の制定時に、花見に双眼鏡を持っていくのも準備行為に当たるのかという議論がなされており、単なる散歩や買い物が準備行為とされかねません。
 今まで、検察庁が共謀罪で起訴した事例は見当たりませんが、一度、共謀罪が適用されると、歯止めが利かなくなり、政府にとって都合の悪い人を共謀罪で逮捕・処罰する運用がなされる危険性があります。

どうやって「対策」してきたの?

 このような問題がある法律なので、法律を廃止するのが一番の対策ですが、政権交代などがない限り、成立した法律を廃止することは難しいです。
 そこで、当対策本部は、政府が誤った法律の運用をして人権を侵害することを防ぐため、これらの法律の危険性を忘れないよう、講演会の開催やニュースの発行といった啓発活動を行ってきました。

 『秘密保護法・共謀罪法対策本部ニュース』は、2022年10月時点で、43号を発行しました。
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 講演会としては、2018年度は、「今を『戦前』にしないために~共謀罪・秘密保護法の危険性を考える~」と題して、歴史学者の荻野富士夫氏に講演・対談をしていただきました。
 荻野氏からは、「秘密保護法と共謀罪の成立により、近代日本における治安維持法等の治安立法と特高警察・思想検察による治安体制と同様の『戦争ができる国』が構築されつつある」などのお話がされました。

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[2019年1月 荻野富士夫氏講演会]

 また、2019年度は、「共謀罪・秘密保護法をどう阻止するか~紛争報道の重要さを知る」と題して、ジャーナリストの安田純平氏に講演・対談をしていただきました。
 対談では、「日本政府の何もするなという姿勢では、自分で情報に接近して真実を見極めることができず、『自己責任』を取ることもできない。このような姿勢と不寛容な空気が共謀罪を適用しやすく、適用しても批判されない社会にしている。自由な海外取材ができず、外国にとって都合のよい情報だけ知らされる日本の『特定秘密』には疑問がある」などのお話がされました

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[2019年11月 安田純平氏講演会]

これからも「対策」していきます!

 2020、2021年度は、コロナ禍のため、講演会は開催できませんでしたが、「特定秘密」の指定状況の調査や、秘密保護法や共謀罪と同じく運用次第で国民の権利が侵害される危険性がある重要土地調査規制法及びデジタル関連法の学習会を行い、コロナ禍が収束した後の活動方針を議論してきました。

 本年度は、開示された重要土地調査規制法の法令等協議の資料を検討して、問題点をチェックするとともに、当対策本部の有志が同法のパブリックコメントに意見を提出しました。Zoomなどを利用した講演会の開催も検討しています。

 対策本部や弁護士会だけでは、法の誤った運用を防ぎ、権力の暴走を防ぐことはできません。これからも市民の皆様に情報発信して啓発活動を続けて参ります。皆様のご協力をお願いいたします。