対策本部ニュース・タイトル.jpg

   

 日本弁護士連合会主催「経済安全保障分野に厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに関する院内学習会」報告

秘密保護法・共謀罪法対策本部
事務局長 四 橋 和 久

 令和6213日、衆議院第二議員会館において、標記院内学習会が開催されました。

 齋藤 裕 日弁連副会長の開会挨拶の後、三宅 弘 日弁連秘密保護法・共謀罪法対策本部本部長代行から、日弁連の118日付意見書の報告がなされました。
 三宅本部長代行は、意見書の報告において、アメリカでは政府の違法行為を秘密指定することが禁止されており、秘密とした情報を秘密指定解除する仕組みがあるが、日本は秘密指定の要件が曖昧であり、秘密指定解除する仕組みが取り入れられていないという制度上の欠陥を強調しました。

 次に、海渡雄一 日弁連秘密保護法・共謀罪法対策本部副本部長が聞き手となり、井原 聰 東北大学名誉教授が、経済安全保障分野における新たな秘密保護法制(以下「経済安保法」といいます)の問題点についてオンライン報告しました。
 井原教授は、経済安保法の秘密指定については、規制内容の大半が政令に委任され、経済安全保障情報の定義規定がないことから、非常に広範な情報が秘密指定される可能性があることを指摘しました。
 井原教授は、秘密指定の結果、国民の知る権利が大幅に縮小されて、政府の恣意的な運用が危惧されること、秘密を扱うことになる民間企業の労働者、大学の研究者等の多くがセキュリティ・クリアランスの適性評価を受けることになるが、適性評価の対象者の利益を保護するシステムが考慮されていないことを懸念しました。
 海渡副本部長が、戦前には国家総動員法という経済活動を国の管理下に置く法律が制定されて、太平洋戦争の軍事動員の核となったが、経済安保法も法の構造から国家総動員法と同様の危険性があることを心配すると述べますと、井原教授も、戦争ができる準備をしていると思われると同感していました。
 適性評価を受けるか否かは任意とされているという点については、井原教授と海渡副本部長は、適性評価を拒めば、民間企業であれば担当部署から外されて査定等で不利益を受けることになり、研究機関であれば当該研究ができなくなるので、任意に拒むことは困難であり、適性評価が人権侵害となりうるという意見を述べました。
 最後に、井原教授は、日本の秘密指定の制度では、政府の情報が隠蔽されて知る権利が侵害される可能性があること、秘密が裁判所に開示されず冤罪事件の温床となる危険性があること、政府が適性評価等のデータを一元化して収集して監視国家となることを伝えて、報告が終わりました。

 国会議員も会場とオンラインで参加されて、参加議員からの挨拶では、「特定秘密保護法のときも、何が秘密?それは秘密ですというように、全てが秘密にされた」という問題点が指摘されました。
 本学習会には、会場参加48名、オンライン参加75名と多数の参加がありましたが、より多くの方に経済安保法の問題点を知ってもらうため、法案の内容が明らかになった段階で、再度院内集会を開催することを予定しています。

報 告
 日弁連が「経済安全保障分野にセキュリティ・クリアランス制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見書」を発出しました!

 1月17日、政府が経済安全保障上の機密情報を扱う人を認定する「セキュリティ・クリアランス」の法制化に向けた有識者会議が最終案を取りまとめました。
 これに対し、日本弁護士連合会は、同月18日付けで「経済安全保障分野にセキュリティ・クリアランス制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見書」を取りまとめ、同月19日付けで内閣総理大臣、衆参両院内閣委員会委員、衆参両院情報監視審査会委員及び内閣府独立公文書管理監宛てに提出しました。

 216日の報道では、政府は、同月15日にセキュリティ・クリアランス(適性評価)制度の導入を盛り込んだ「重要経済安全保障情報保護・活用法案」の条文案を与党に示し、同月下旬にも法案を国会提出する、とされています。ご関心をお寄せいただくようお願いします。


【意見書の趣旨】

 当連合会は、法形式の如何を問わず、経済安全保障分野にセキュリティ・クリアランス制度を導入し、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)並みの厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することについては、国民的な議論を経た上で、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(「ツワネ原則」)に則し、少なくとも次の各項目について定めるなど、国民の知る権利及びプライバシー権が侵害されない制度的な保障がなされない限り、反対する。

① 政府の違法な行為を秘密指定してはならないと法定すること

② 公共の利害にかかわる事項を明らかにしたことによってジャーナリストや市民が刑事責任を問われることがないこと

③ 適正な秘密指定がなされているかどうかをチェックするための政府から真に独立した機構を作ること

④ 一旦秘密に指定した事項が期間の経過等によって公開される仕組みを作ること


*意見書の詳細は、こちらをご覧ください。

経済安全保障分野にセキュリティ・クリアランス制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見書 (nichibenren.or.jp)