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本部長就任のご挨拶

令和2年度 愛知県弁護士会 会長 
秘密保護法・共謀罪法対策本部 本部長 
山  下  勇  樹

 本年度の秘密保護法・共謀罪法対策本部の本部長に就任しました。1年間どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 2014年12月10日に特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」といいます。)が施行されてから5年が経過しました。愛知県弁護士会は、2013年に秘密保護法対策本部を設置し、秘密保護法が制定される前から、シンポジウムを開催するなどして同法に反対する活動を行ってきました。その後、罪刑法定主義に反する恐れが大きい組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(以下「共謀罪法」といいます。)の制定に反対する活動も加わり、2017年6月15日に共謀罪法が成立した翌年には、秘密保護法対策本部の名称を、日本弁護士連合会の組織状況にあわせて秘密保護法・共謀罪法対策本部(以下「対策本部」といいます。)と変更しました。

 名称変更後も、対策本部は一貫して秘密保護法の危険性を指摘し、廃止を強く求める活動を継続しています。昨年11月16日には、日本弁護士連合会との共催で、ジャーナリストの安田純平氏の講演会を開催し、国民がありのままの事実を知り、それら事実をふまえて自ら考え、発信することの重要性について市民の皆様と共に考えました。そして、本年度は、対策本部の重要性に鑑みて、2020年5月31日までとしていた存続期間を改め、目的達成まで活動を継続できるよう規則改正を行いました。

 国に関する情報は、国民の共有財産です。しかしながら、秘密保護法上、行政機関の長が指定する「特定秘密」の定義は曖昧であり、政府による恣意的な運用が行われることによって、民主主義の根幹たる国民の知る権利が侵害される危険があります。また、「特定秘密」の漏えい・取得行為やこれら行為の未遂・共謀等を広く処罰対象にすることは、国民や報道機関が国に関する情報にアクセスする行為を萎縮させ、取材・報道の自由を阻害する結果を招来しかねません。そもそも、近年の公文書管理のあり方には厳しい目を向けるべきです。自衛隊日報問題、森友・加計問題、桜を見る会の招待者名簿廃棄、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の議事録不作成など、現在及び将来の国民に対する説明責任を軽視した事態が繰り返されています。

 そして、共謀罪法について言えば、「組織的犯罪集団」の定義自体が明確ではなく、犯罪の構成要件が曖昧です。また、同法が規定する「準備行為」は、それまで処罰の対象とされていなかった刑法典の予備・準備行為より前の段階の行為を犯罪として処罰するものであり、集会・結社の自由や言論の自由を制約する危険を孕んでいます。

 日本国憲法第12条は、「憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と定めています。国民主権、民主主義の根幹を脅かす秘密保護法、共謀罪法に対して、私たちはその問題点を訴え続けなければなりません。

 本年度も、対策本部では、市民の皆様と共に秘密保護法、共謀罪法の運用をこれまで以上に厳しく監視し、その廃止を求めていく所存です。

以上

困難な時代だからこそ、知る権利と自由が重要だ

秘密保護法・共謀罪法対策本部 副本部長
新  海    聡

 8月28日、首相が辞意を表明した。公文書の改ざんや違法な公文書の廃棄が明らかになり、最近も、新型コロナウイルス対策の専門家会議の議事録を作成していないことや、「アベノマスク」の発注過程が極めて不透明であることなど、情報公開に後ろ向きな姿勢ばかりが目立つ内閣だった。また、新型コロナウイルス対策も、行き当たりばったりの印象を拭えないものだった。イタリアの作家パオロ・ジョルダーノ氏は「パンデミックが僕らの文明をレントゲンにかけているところだ。」と著書に記しているが、コロナ禍での我が国政府の姿勢は、情報の公開や説明責任を尽くす気がないことをより一層明らかにしたと言わざるを得ない。

 こうしたことから、次期首相候補にコロナ禍に強いリーダーシップを求める声が強くなることも想像できる。たしかに、国民に行動の制限を呼びかけた今年3月18日のドイツのメルケル首相の演説や、ニュージーランドのアーダーン首相の連日の呼びかけは、コロナ禍の中での政治家のリーダーシップのとりかたを私たちに強く印象づけている。

 しかし、同時に、メルケル首相やアーダーン首相のリーダーシップが、国民に対する十分な情報の公開を前提としたものであることは押さえておく必要がある。実際、メルケル首相は、3月18日の歴史的なテレビ演説の冒頭で「開かれた民主主義のもとでは、政治において下される決定の透明性を確保し、説明を尽くすことが必要です。私たちの取組について、できるだけ説得力ある形でその根拠を説明し、発信し、理解してもらえるようにするのです。」と述べている。(https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/politik/-/2331262

 つまり、私たちが重視すべきは、リーダーシップの強さではない。そのリーダーは民主主義に敬意を払っているか、個人の自由と尊厳を守ろうとする熱意に支えられているか、ということこそ、注視すべきだ。

 今、私たちの前には秘密保護法と共謀罪法がある。秘密保護法はいともたやすく知る権利を葬り去ることを可能にする。共謀罪法の濫用によって、政府に反対する市民を逮捕することも容易だ。こうした危険な法律のエッジに立たされている私たちは、強いリーダーシップ待望論が、知る権利を求める声を弾圧し、共謀罪法を積極果敢に適用する独裁者の待望論に転化してしまうことがないよう、冷静に見ていく必要がある。

以上

日弁連から 「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準の見直し」等に関する会長声明 が出されました。

 本年6月16日に政府が公表した「特定秘密保護法の運用基準」の見直しに対する日弁連の会長声明が、8月5日に出されました。

 会長声明が特に強調している点は、衆議院および参議院の両議員に設置された情報監視委員会が十分な資料を入手できていない、という点です。これについては日弁連も以前から繰り返し指摘していますが、特定秘密指定の不当な拡大を防止する要の両議院の情報監視委員会が、法で認められた資料すら入手できないこと、これが以前から改善されていないことは、特定秘密保護法の運用が極めて危険な領域でなされていることを示すものです。私たちも運用について関心をもちましょう。

 日弁連会長声明は下記のサイトで入手可能です。
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2020/200805.html