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報 告

日弁連「いわゆる共謀罪に関する院内学習会」開催される

    秘密保護法対策本部 委員  濵 嶌 将 周

 森友学園にかかる公文書〝書き換え〟問題で国会が大揺れしている最中の3月13日、衆議院第二議員会館において、日弁連の主催で、共謀罪法の廃止を求める院内集会が開催された。

 同集会には野党各党から、多数の議員が参加された。
 参加議員からの挨拶では、「現政府こそが公文書変造・虚偽公文書作成の共謀で逮捕されなければならない」、「現政府を共謀罪適用第1号にしてから、共謀罪を廃止に追い込もう」といったジョークも交えながらの、共謀罪法廃止に向けての決意が述べられた。

 集会では、まず、海渡雄一・日弁連共謀罪法対策本部副本部長から、基調報告があった。
 海渡弁護士は、国連自由権規約委員会が日本政府に対し、「共謀罪法が表現・集会・結社の自由を過度に制限し、自由と安全の権利の侵害につながる懸念」や、「共謀罪の対象犯罪が広範で、適用要件が一義的ではないため、自由と安全、公正な裁判を受ける権利の侵害を引き起こす懸念」を示していて、日本政府がこれに回答しなければならないと報告された。
 また、捜査機関が共謀罪の捜査を本格的にやろうとすれば、通信傍受範囲のさらなる拡大や会話傍受の導入、官民の監視カメラと顔認証システムとの連動、あるいは、密告捜査や市民団体内部への捜査官の投入捜査などが駆使され、警察捜査が市民のプライバシーを侵害する危険性が高まること、大垣市民監視事件や大分選挙事務所監視事件、前川次官に対するスキャンダル報道などを見れば、その兆候はすでに現れていることを指摘された。
 その上で、野党が共謀罪法の廃止法案を共同提案したことも含め、廃止運動の存在が、法の濫用の歯止めとなり、政権交代したときに法の廃止を実現できる担保・根拠となるとして、日弁連も政府に対して、共謀罪法の廃止を求め続けるとともに、監視捜査に対する効果的な監督システムの導入を提言していくとの決意を述べられた。

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 つづいて、松宮孝明・立命館大学大学院教授の講演があった。
 冒頭、松宮教授は、学者として正確性を期したいとして、参加議員からの挨拶にあった「現政府に共謀罪を適用」について、すでに公文書は書き換えられていて既遂なので、共謀罪は独立して成立しない、と訂正され、笑いを誘った。
 松宮教授は、法務省解説によれば、共謀罪については、「組織的犯罪集団」の活動として「計画」が具体的かつ現実的なものであり、「準備行為」が当該計画に基づいて行われ、実行に向けて具体的に顕在化させるものであることを立証する必要があるので、共謀罪の立証は単なる予備罪の共謀共同正犯より高いハードルを越えなければならないことになり、共謀罪は裁判ではほとんど使えないはずだ、と言及された。
 また、共謀罪の存在は犯罪の自発的中止の奨励(刑法43条ただし書き)という刑事政策を台無しにしかねないこと、他方、共謀罪がなくてもTOC条約(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約)を離脱しなくてよいことなど、共謀罪法の不要性にも言及された。
 しかし、それでも共謀罪は使われるだろう、という。裁判にしなければいい、つまり、警察にとっては使えるからである。警察からすれば、共謀罪捜査名目で市民の個人情報を広く収集することが可能になる。プライバシー権に関する国連特別報告者のカナタチ氏は、警察が収集した個人情報の総合的コントロールを可能にする法制度の必要性を指摘されているとのことである。
 以上をふまえ、松宮教授は、「やはり廃止しかない」と講演を締められた。

 そう、共謀罪法は廃止しかないのだ!