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報 告

院内集会「共謀罪はやっぱり廃止! -大垣警察市民監視事件-」

日弁連学習会「警察の監視に対する統制の在り方に関する学習会」

1 大垣警察市民監視事件をご存じだろうか?

 岐阜県大垣市での風力発電施設建設計画をめぐり、岐阜県警大垣署が反対派住民を監視し、収集した情報を事業者のS社に漏洩した、という事件である。朝日新聞が2014年、大垣署とS社とのやりとりを記録したS社作成の議事録を入手したことで明らかとなった。

現在、情報漏洩された住民らが、岐阜県を被告にして、慰謝料の国家賠償に加え、収集した個人情報の抹消を求めて訴訟中である。

2 院内集会

 2月16日午後、衆議院第二議員会館において、同訴訟の原告・支援者団体の主催で、集会が開かれた。大垣署による市民監視は、「共謀罪」捜査の問題点として懸念されてきた警察による市民監視の先取りであるとして、あらためて「共謀罪」の廃止を訴えるべく開かれたものである。今国会に「共謀罪」廃止法案を共同提出した野党各党から、議員も駆けつけていらっしゃった。

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 冒頭に新聞記事からの抜き書きで事件紹介を記したが、原告・弁護団からの報告を聞き、この書き方が不正確だと気づかされた。

 まず、大垣署が収集・漏洩したのは、風力発電建設計画「反対派」住民の情報ではない。住民の一部が、風力発電施設に問題点はないか勉強を始めたばかりの段階で、まだ住民は反対運動するに至っていなかった。また、まだその勉強会に参加すらしていない、ただ普段から熱心に環境保護活動をしているというだけの無関係の市民も対象となっていた。

 加えて、大垣署は情報「漏洩」したのではない。うっかり漏らしたのでなく、S社を署に呼び出し、積極的に情報「提供」し、S社に警戒を呼びかけた。

 警察はすでに、普段から市民の個人情報を広く収集し、普通の市民の日常生活に介入していたのである。その警察に、「共謀罪」捜査という市民監視のお墨付きを与えてしまった。今後さらに警察による市民監視が進み、市民生活が萎縮しきってしまう前に、やはり「共謀罪」は廃止しなければならないと、参加者は思いを再確認し、また、参加議員は力強く決意を述べられた。

3 日弁連学習会

 同じ日の夕刻、日弁連会館において、公安警察等による監視の現状や、立法措置の在り方に関する学習会が開かれた。秘密保護法や共謀罪法が施行され、公安警察等による市民の監視や個人情報の取得・管理に関する懸念が高まっていることをふまえての企画である。

 まず、3人のゲストから簡単に基調報告がなされた。

 原田宏二さん(元北海道警釧路方面本部長)からは、治安情勢把握のための情報収集は、犯罪捜査のための情報収集とはまったく異質のものであること、その情報収集システムは協力者(スパイ)獲得や盗聴、監視カメラ、DNA照合等と多様であるが、法的根拠のない手段や非合法の手段も用いられていること、にもかかわらずチェック機能が喪失していて濫用に歯止めがかけられない状況であることが報告された。

 阿部岳さん(沖縄タイムス記者)からは、沖縄県名護市辺野古での新基地建設や東村高江でのヘリパッド建設における、警察(機動隊)の様子が生々しく報告された。そこでは警察は「不偏不党かつ公平中正」(警察法2条2項)な存在ではもはやなく、明確に工事推進のために住民を監視し、排除し、微罪でも逮捕し、また、高江では作業員を警察車両に乗せ、機動隊員が工事車両に乗せてもらう状況になっているとのことである。

 船田伸子さん(大垣警察市民監視事件原告)からは、大垣署が、風力発電施設の勉強会に参加すらしていない自分の情報を収集していたこと、それも、実際には勤務していた法律事務所を体調を崩して休職中だったにすぎないところを、「入院中」だと、S社に誤った情報を提供していたことなどが報告された。大垣署は、風力発電施設の計画が持ち上がるずっと以前から、市民の情報を広く収集しており、それらを適宜都合よく脚色し、つなぎ合わせてストーリーを作り上げていたのである。

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 つづいて、海渡雄一弁護士(日弁連秘密保護法対策本部副本部長・共謀罪法対策本部副本部長)と出口かおり弁護士(秘密保護法対策本部委員)をコーディネーターに、パネルディスカッションが行われた。

 各ゲストからは、憲法改定の動きとも連動して、警察による市民生活への介入がますます進みつつある実態に懸念が示された。そして、そのことによる、対象者本人に対する萎縮効果はもちろん、その周囲の支援者に対する萎縮効果、さらには、もっと周辺の賛成も反対もしていない市民への萎縮効果(見て見ぬふりをする、無難に権力者側・多数派に同調する)の問題が指摘された。

 ドイツでは、ナチスの反省をふまえ、連邦と州のデータコミッショナーが警察等によるテロ対策情報収集について調査し、問題のある収集データの削除要求をするという運用がされているとのことである。日本でも、そのような独立機関によるチェック機能の確立を望みたい。

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※ いずれも入場無料・事前予約不要。どなたでもご参加いただけます。