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報 告

講演と対談「共謀罪のある社会」~廃止に向けての第一歩~
          秘密保護法対策本部 委員  浮葉 遼

1 はじめに

 12月2日、東別院ホールにて、共謀罪廃止に向けて、京都大学大学院法務研究科教授の髙山佳奈子氏を招き、表記の講演と対談を行った。

2 講演

 本年6月15日に成立した共謀罪には様々な問題がある。髙山氏は、手続きの問題と内容の問題に整理し、説明した。

 まず、手続きの問題。国会では、提出された順に法案を審議するルールがあるが、共謀罪法案は、先に提出された性犯罪への対策を強化する刑法改正案を押しのけて審議された。また、国会法56条の3第1項の必要性や同2項の緊急性の要件を満たさないにも関わらず、中間報告により委員会採決が省略された。こうやって国がルールを守らないことは、国際的な信用の低下に繋がる。

 次に、内容の問題。諸外国の共謀罪法では、適用の対象となる「組織的犯罪集団」や処罰される行為となる「計画」に何らかの限定がされているが、日本は無限定であり、恣意的な適用が可能となっている。また、これまでの最高裁判例では、予備罪の処罰をするためには、処罰に値する実質的危険を必要としてきたが、共謀罪法は、抽象的な危険のみで処罰できてしまう。

 続いて、髙山氏は、政府がテロ対策として国連国際組織犯罪防止条約に批准するために共謀罪の創設が必要であると説明してきたことについても問題を指摘する。しかし、政府の説明と異なり、日本には既に多くの予備罪・準備罪があることなどから、同条約の要求は満たしている。それどころか、驚いたことに共謀罪法案にはテロ対策の条項が一切ない。共謀罪法案をテロ対策のためだとして支持する国民がいるとしても、それは政府がテロ対策のためと説明をしたによる勘違いでしかない。正しい情報がなければ、正しい判断はできない。自由な情報の流通が阻害されると、民主主義は機能しなくなる。

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3 対談

 四橋和久委員をコーディネーターに、髙山氏と当対策本部副本部長の中谷雄二委員による対談が行われた。

 中谷委員は、共謀罪が社会に与える影響について述べた。共謀罪は、内容の無限定さゆえに誰でも逮捕される可能性がある。そして、一度逮捕されてしまえば、後に身の潔白が証明されようが失った社会的地位は二度と回復されない。この不利益の甚大さから、市民は、逮捕されるかもしれないという可能性に怯えることとなる。

 髙山氏は、漫画を例にあげた。漫画家の中には著作権法違反の共謀とされることを恐れ、表現活動を自粛する者が出てくる。小説や音楽も同様である。

 今は、実感が薄いであろう。しかし、今後、逮捕者が1人でも出てしまえば、他人事では済まされない。逮捕に至っていないだけで、既に捜査はされているのかもしれない。二人は、共謀罪の廃止を強く呼びかけた。

4 おわりに

 共謀罪の成立から半年経ったが、参加者は150人に及び大盛況であり、廃止に向けての第一歩となった。当対策本部は、今後も共謀罪廃止に向けた活動を続けていく。