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報 告

日本弁護士連合会人権擁護大会シンポジウム第2分科会
「情報は誰のもの?~監視社会と情報公開を考える」報告
          人権擁護大会シンポジウム第2分科会実行委員会 委員  加藤 光宏

 10月5日、滋賀県大津市で開催された標記シンポジウムに集まった780人もの参加者のお目当ては、間違いなくエドワード・スノーデン氏だった。会場に配置された3つのスクリーンには、あのスノーデン氏の顔が大写しにされた。ロシアと会場とを結んでのライブインタビューである。

 スノーデン氏は、米国政府が無差別に通話記録、メールなどの大量監視を行っていた事実について、「あれほどの大量の監視をしていても、9.11テロは防げなかった。テロは、大量監視を正当化しない」と述べた。そして、このようにいかにも正当な理由があるかのような行為について、我々は常に懐疑的であるべきであり、その「理由」が本当なのかを検証すべきだと訴えた。それこそが、自由の形態なのだと。

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 スノーデン氏がプライバシーについて語った言葉の中で印象的なものを紹介しておきたい。「政府は監視について、隠すことがないなら恐れることはない、という趣旨のことを述べます。しかし、プライバシーとは、何かを隠す権利ではないのです。プライバシーは自由な生活を保障するための権利なのです」。つまり、プライバシーがなければ、人はあるがままの自分ではいられない、と言っているのだ。示唆に富んだ言葉といえよう。

 スノーデン氏のライブインタビューに先立ってなされた、日弁連の委員による、総論、監視、公文書管理・情報公開の各基調報告では、青森県弁護士会の田村智明弁護士が「かつては放っておいてさえもらえれば、プライバシーは守られました。しかし、今はいつ誰が自分の情報を集め利用しているのか、わからなくなっています。だから、どのように監視され、どのように歯止めをかけるのかを知っておく必要があるのです」と訴えた。現代のプライバシー問題は、従前とは次元が異なる領域にあるのである。

 この点については、基調講演を行った米国弁護士のスティーブン・シャピロ氏も強調していた。 
 「プライバシーについての法的な思考のベースは、アナログ時代に形づくられたものであり、現代のデジタル時代に追いついておらず、時代遅れとなっているのです」と。シャピロ氏は、米国での大量監視の実情も具体的に報告してくれた。米国では、ありとあらゆる通話が政府によって記録されている。通話内容が記録されているのではなく、電話番号、即ちどの番号からどの番号に通話がされたかの記録だ。そして、誰かターゲットが定まると、たちまち通話記録を解析し、そのターゲットと直接通話した者、さらに、その者と通話した者と広げていくことで、ターゲットの周辺の人間関係を洗い出すというのである。9.11テロ以来、「次のテロ防止」を旗印に、大量監視に突き進んでいるとのことであった。

 シンポジウムの最後は、東京弁護士会の出口かおり弁護士をコーディネーターに、シャピロ氏、京都大学教授の曽我部氏、共同通信社の澤氏によるパネルディスカッションであった。
 公権力による大量監視、特定の案件に特化した監視(GPS捜査)などの問題が話し合われた後、「国家による監視を国民が監視する」ために情報公開・公文書管理の重要性について議論が交わされた。日米の情報公開の実情に対する澤氏のコメントが印象的である。「米国では情報公開を請求すると、時間がかかるが、きちんと情報が開示される。日本は時間は守るが、ほとんど開示されない(「ノリ弁」と呼ばれる黒塗りの状態)」と。

 非常に示唆に富み、考えさせられるシンポジウムであった。また、情報公開・文書管理の重要性を再認識させられた。

(了)

お知らせ

講演と対談
「共謀罪のある社会―廃止に向けての第一歩」

【と き】
2017(平成29)年12月2日(土) 午後1時30分~午後4時15分[開場 午後1時]

【ところ】
東別院ホール (名古屋市中区橘2-8-55)
※地下鉄名城線「東別院駅」4番出口より西に徒歩約5分

【ゲスト】
◯講 師
髙山 佳奈子さん
東京都生まれ 京都大学大学院法学研究科教授(刑事法)
日本刑法学会理事、「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」呼びかけ人
<主要著書>
『故意と違法性の意識』(1999年、有斐閣)、『共謀罪の何が問題か』(2017年、岩波ブックレット)
◯対談者
中谷 雄二さん
京都府生まれ 1984年弁護士登録(36期)
愛知県弁護士会秘密保護法対策本部副本部長、「秘密法と共謀罪に反対する愛知の会」共同代表、秘密保護法対策弁護団共同代表

入場無料・事前予約不要 どなたでもご参加いただけます(定員400名)