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 早いもので、私たちの任期も今月で終わりとなり、今回が最後のご挨拶となります。皆さんも同じだと思いますが、新型コロナ感染症に翻弄された1年でした。

 ところで、最近裁判所において画期的な判決が相次いでいます。

 1つは、2月21日に岐阜地方裁判所で言い渡された判決です。大垣市内に風力発電施設の建設計画が発表されたことを受け、地元住民が勉強会を開始したところ、大垣警察署が勉強会の参加者に関する個人情報を収集し、風力発電施設を計画する中部電力の子会社にその個人情報を提供したことについての違法性を認め、住民4人に慰謝料各50万円と弁護士費用5万円の支払いを認めたという内容です。

 もう一つは、2月23日に大阪高等裁判所で言い渡された判決です。旧優生保護法の下で不妊手術を強制された3名の方が国に対する損害賠償を求めた事件で、20年の除斥期間が最大の争点とされましたが、大阪高裁は、人権侵害が強度だったこと等に照らし、「(除斥期間を)そのまま認めることは著しく正義・公平の理念の理念に反する」として、損害賠償の一部を認めたという内容です。

 前者は個人情報の取り扱い、後者は不妊手術の強制という、いずれも著しい人権侵害の事件で、裁判所がその人権侵害を認めたというものです。前者は、これまでに同種事件の判断がなされていなかった分野で、後者はこれまでの同種事件で除斥期間の適用を認めて請求を棄却していたもので、いずれも従来に例のない画期的な判決です。いずれも今後上級審で判決が出されることになる可能性が高いので、確定判決とは言えませんが、このように裁判所が人権侵害を積極的に認定するという大変に好ましいことです。

 また、3月3日には、名古屋高等裁判所において名張毒ぶどう酒事件の第10次再審請求についての判断が示されます。今回は今までにない新たな証拠も提出されており、再審決定が出されることが大変期待されています。

 いつも言っていますが、弁護士の使命は、基本的人権の擁護と社会正義の実現です。今回の判決でも、それぞれの事件を担当した弁護士が、この使命に従った活動を粘り強く行った結果、裁判所の理解を勝ち取れたものと思います。

 私たちの任期は今月で終わりますが、その使命に基づいた弁護士の活動、弁護士会の業務は、4月以降も同じように続いていきます。決して、敷居が高いと言うことはありませんので身近に感じていただき、お困りの際にはお気軽にご相談いただければと思います。

 ところで、皆さまにお詫びしなければならないことがあります。それは今年度3名の会員に業務停止、1名の会員に退会命令の懲戒処分を行ったことです。また、懲戒処分ではないものの、刑事被疑者として逮捕者2名も出ました。いずれも、弁護士への信頼を著しく損なう行為が行われた結果であり、会を代表してお詫び申し上げます。今後、このような会員が現れないように、改めて倫理研修を行うと同時に、会員相互間のコミュニケーションの充実を図り孤立化を防ぐような対策を取り入れるようにする必要があります。

 今年度の私たちの活動に対し、ご支援・ご協力賜りましたことを心から感謝申し上げて、最後のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

2022年3月1日              愛知県弁護士会会長  井口 浩治

副会長

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