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 新型コロナ感染症に対する行動制限が大幅に緩和され、これまでの抑制から解放され、街には人出が戻ってきたところですが、ここに来てまたもや「オミクロン」なる新型コロナの変異株が南アフリカで確認され、すでに各国で広がりつつあり、また日本でも確認されたことにより、一気に行動制限に逆戻りするのではないかとの感があります。年末年始を迎え、新年からの感染拡大が懸念されます。

 ところで11月中は、コロナ禍の制約を比較的感じることなく活動が出来ました。しかしながら、市民の皆さま向け行事に関しては、Zoomウェビナーの併用などにより、完全リアルでの開催まではできませんでした。11月に当会が実施した行事を2つご紹介したいと思います。

 11月14日の「子どもの意見表明権シンポジウム」では、元世田谷区立桜ヶ丘中学校校長の西郷孝彦さんにご講演をいただき、引き続いてパネルディスカッションにも参加していただきました。全ての生徒が3年間楽しく過ごせる学校を目指すことを実践した結果、生徒の意見に従って校則や定期テストの廃止、校則の自由化が実現したというお話には驚きとともに、本当に見習うべき考え方であると思いました。「子どもの意見表明権」をまさに実現したものです。こうした楽しく学校生活を過ごすためという生徒の目線に立つという考え方が広がることが期待されます。

 11月27日には、当会西三河支部の行事として「ケーキの切れない非行少年たちとどうしても頑張れない人たち」と題して、その題名の書籍の著者である宮口幸治さんにご講演をいただきました。児童精神科医の立場から、「境界知能」つまり、IQの平均値と知的障害の判定基準との間に挟まれたIQの人が人口の約14%(7人に1人)いることを前提として、その人たちが学校や社会生活で困らないように「コグトレ」というパズルでのトレーニングによって認知機能を高めることにより、社会生活が豊かになることを推奨されています。

 翻って今の社会を見た場合、構成員である個々人が必ずしも尊重されているとはいえません。個々人の尊厳は、社会の中において「みな同じ人間」という平等を協調するのではなく、「違う部分がある人」ということを認識し、その違いを相互に受け入れていくことにより初めて確立するものです。最近では「共生社会」という言葉もかなり浸透してきました。この言葉でインターネット検索をすると、文部科学省厚生労働省がヒットし、それぞれにその意義が説かれています。一度ご覧いただければと思います。

 11月に開催した2つの行事においては、子どもや障害のある人という場面を通じて、改めてそのことに気付かされました。日本国憲法では、基本的人権の享有、法の下の平等が規定されています。この憲法の規定を実行するために、基本的人権の擁護と社会正義の実現が、弁護士の職務上の使命とされています。

 みんなが楽しく過ごせる社会を目指して、今後も弁護士・弁護士会は、個々の法的問題の解決のみならず、多様な情報発信を続けてまいります。

2021年12月1日              愛知県弁護士会会長  井口 浩治

副会長

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