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 ようやく新型コロナ感染症に対する行動制限が大幅に緩和され、これまでの抑制から解放され街には人出が戻ってきました。外出自粛の中オンラインが普及されたとはいえ、やはり人はリアルでの交流が必要です。

 ところで、昨日は4年ぶりの衆議院選挙が行われ、自民党の絶対安定多数という結果に終わりました。この結果をどう受け止めるのかは、皆さんそれそれお考えのあるところかと思います。ただ、今回の選挙において争点とされるべき気候変動への対応やこれに関連するCO2排出削減などのエネルギー政策、原発問題、さらには海洋プラスティック問題等、我々が直面している問題がほとんど争点にならなかったことが残念です。これらの問題は、今まさにイギリスで10月31日から11月12日まで開催されているCOP26で取り上げられており、世界的には共通の問題です。新たな政権において真剣に取り組まれる課題です。

 もう一つの問題は投票率の低さです。昨日の投票率は55.93%で戦後3番目の低さということです。選挙権は付与のものではなく、過去の歴史で示されるとおり、全ての20歳以上の国民が平等に行使できることになったのは1945年で、これが18歳に引き下げられたのが2016年なのです。社会の一員として選挙で投票することは民主主義の大原則ですが、投票率が6割にも満たないということは多くの国民の意思が反映されていないことになり、逆に言えば4割以上の人が自分の国の行く末を人任せにしてしまっているということです。折角18歳まで年齢を下げたのに投票率が上がらない原因をしっかりと分析する必要がありますが、教育の問題が大きいのではないかと思います。高校で「公共」科目が新設され、学校現場では新しい主権者教育が始まろうとしています。ここに弁護士が積極的に関与し、多様な価値判断を生徒自身が自らの思考することを体得することにより、社会参加への意義を見いだせるようにしてもらいたいと思います。

 11月14日に、「子どもの意見表明権」シンポジウムを開催します。先日も校則による髪の色の規制を巡り不登校になった元生徒からの請求に対し、裁判所がこの請求を認めないという判決を出しました。髪の色を校則で縛る必要があるのか甚だ疑問です。校則による管理教育は、生徒の自ら思考する力を阻害するのではないかと思うからです。こうした観点も含め、まさにこの時期に「子どもの意見表明権」をテーマとすることは時宜を得るものです。オンライン併用での開催となりますから、お気軽にご参加いただければと思います。

 名古屋法律相談センター(℡052-565-6110)では、これまでの体制に加えて、Web相談や夜間相談も開始しております。お気軽にご利用下さい。詳しくは愛知県弁護士会のホームページをご覧下さい。

2021年11月1日               愛知県弁護士会会長  井口 浩治

副会長

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